2023 年 8 月 31 日

債券の時価を適正に評価していますか?

リフィニティブ編集チーム

I. SUMMARY

  • ボラティリティの高まり: インフレ率の高まりやウクライナ情勢の深刻化に伴い、債券のボラティリティが高まっている。
  • 世界的な規制・コンプライアンスの強化: MiFID2 や FRTB、IFRS13 などの新たな規制が設けられ、債券価格に説明責任が求められつつある。
  • 債券データを活用したプライシング: 相対取引が中心の債券でも、評価時価や信頼性の高い評価機関によるデータを用いて公正性、透明性の高いプライシングを行う必要がある。

 

これまで低い政策金利によりボラティリティが低いとされてきた債券。ところがインフレ率の高まりや国際情勢の変化により、ボラティリティが高まりつつあります。それによって、債券にも正確な時価を評価するニーズがかつてなく高まっています。株式に比べて安全な金融商品とされてきた債券にどのような変化が起こっているのでしょうか。債券投資をめぐる昨今の変化について、述べていきます。

 

II. 債券をめぐる投資環境の変化

長年ボラティリティが低いとされていた債券に、大きな変化が訪れています。これまで 30 年以上にわたって先進国の中央銀行は、インフレ率よりも低い政策金利を設定していました。政策金利と利回りの連動性が高い債券はボラティリティが低く、より安全な金融商品とみなされていました。

ところが、インフレ率の高まりやウクライナ情勢の長期化・深刻化に伴い、債券のボラティリティが高まっています。とくにウクライナ情勢は各種サプライチェーンにも影響を及ぼし、インフレ率の上昇に寄与しています。事実、欧州中央銀行 (ECB) が政策金利を引き上げた際、債券価格は1年半で大幅に下落し、約18%の損失をもたらしました。

こうしたグローバルの状況は、日本国内の運用会社における投資戦略にも影響をもたらしています。もちろん、2023 年現在日本の政策金利やインフレ率は高くありません。しかし多くの運用会社は国内債と海外債を組み合わせているため、株式と債券の比率を 60% と 40% で構成するいわゆる「60/40ポートフォリオ」を見直すケースも出てきています。

債券の投資環境の中長期的な見通しについては LSEG のアナリストによる『投資環境の中期見通し―市場を動かす 4 つの主要トレンド』のレポートを参照ください

 

III. 規制・コンプライアンス基準の変化への柔軟な対応

こうした投資環境の変化に加え、債券にまつわる国際的な規制やコンプライアンスが MiFID2 や FRTB、IFRS13 といった債券価格にまつわる各種規制が整備され、債券価格の適正化に関するコンプライアンスが強化されつつあります。各ステークホルダーは、次のような対応を行っています。

 

1. 運用会社

最良執行の観点から、取引価格の公正性を証明する必要に迫られています。2018 年に制定されたMiFID2 (第 2 次金融商品市場指令) に基づき、株式以外の金融商品についても投資家保護を強化し、市場の透明性向上を図らねばなりません。ブローカーに支払う売買手数料と、リサーチの対価を分離することも求められています。

 

2. 金融機関

市場リスクを的確に把握するため、発行体のリスクスプレッド (ベンチマークしている重要指標との価格差) を補足しなければならなくなりました。銀行は、国際的なリスク管理規制基準である FRTB (Fundamental Review of the Trading Book) に基づき、より正確なリスク評価を行い、より適切な資本要件を設定する必要が出てきています。

 

3. 企業

コンプライアンスの観点から、投資家に対してより適切な情報提供をする必要に迫られています。債券も含めた自社の金融資産がどれくらいの時価なのか把握しておかねばなりません。相対取引が中心で時価の評価は難しいとされてきた債券についても、現状どれくらいの価値があるのかを理解し、投資家への説明責任を果たさねばなりません。そのために、企業はIFRSなどの算定基準に基づき、債券価格の時価を自社である程度算出しなければならなくなりました。

 

IV. 求められる債券データの品質

こうした変化を背景に、債券の時価を適切に評価する必要性が高まっています。そこで求められるのは信頼性の高い評価機関が発表した、公正かつ透明性の高いデータです。

LSEG (ロンドン証券取引所グループ) のビジネスであるリフィニティブの有する債券データは、260 万以上の債券銘柄に関する時価評価と、全アセットクラス 8,000 万銘柄以上のリファレンス・データに基づいています。

時価評価データについては、先進国、新興国の中核セクターのみならず、流動性の高い資産から低い資産まで網羅し、グローバルで数千以上の金融機関に提供されています。また、ASC 820 および IFRS 13 で規定された会計ガイドラインに準拠し、グローバルに広がる担当者のネットワークを通じて多様な市場の情報を反映しています。

リファレンス・データについては、先進国および新興国の国債、社債、米国の地方債、銀行ローンなどのデータを網羅しています。それに加えて、ISIN、SEDOL、RIC、PermID® など、金融商品のさまざまな識別子にも対応。債券は多数のカテゴリーとサブカテゴリーからなる非常に複雑な資産クラスなので、各金融機関や企業が独自にデータを収集し、アクセスするのは困難です。例えば転換社債の場合、グローバルで日々全体の約3%が変化します。その点、リフィニティブでは 20 年におよぶ転換社債データの蓄積があるため、マーケットの日々の変化にも柔軟に対応できるのです。

データの品質を担保するため、各証券取引所や発行体、アンダーライター (有価証券引受団体) などから幅広く専門的なデータを収集しています。収集されたデータは各国のマーケットに精通した各地のアナリストや専門家から成るグローバルなチームによって徹底的にチェックされ、精密にメンテナンスされた上で各種配信プラットフォームに提供されています。その結果企業、時価、マーケットデータとすばやくリンクでき、債券の時価評価に大きく寄与しています。

こうした債券データは世界的な債券インデックスを展開する FTSE Russell や、債券分析プラットフォームとして 30 年に渡り高評価を得てきた Yield Book にも配信されています。

つまり、FTSE Russell 債券インデックス、その算出に利用されるリフィニティブ評価時価、そして Yield Book の分析を利用することで、ポートフォリオ構成銘柄とベンチマークの価格差などのトラッキングエラーを排除し、フロントからバックオフィスまで、データの一貫性を担保することが可能になるのです。

 

V. まとめ

今後大きな変化が予想される債券において、信頼できる国際評価基準や評価時価データに常時アクセスできる環境を整えておくことが非常に重要です。

刻々と変わる国際情勢やインフレ率、年々強化されるグローバル基準の規制やコンプライアンスに対応し、公正性・透明性の高い情報に基づく意思決定が必要になってきます。それによって、投資家への情報提供の質を向上させ、運用効率を高めることができるのです。

 

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