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2021年7月21日
ESG投資の始め方、初心者でもわかる3つのポイントで解説

ESG投資の始め方とは? 初心者の方にも分かりやすく3つのポイントで解説します。 E (環境) S(社会) G(ガバナンス) の要素に注目しながら投資先を選別する投資の仕方ですが、ESG投資の始め方や気を付けるポイントは企業と投資家によって異なります。ここでは、すでに実体経済にも組み込まれるようになってきているとされるESG投資の始め方について、企業や投資家の立場から整理していきましょう。
I. ESG投資の始め方
ESG投資の始め方として、企業は国連のグローバル・コンパクトやGRI、ISO26000のような国際標準を通じて、非財務情報の報告を行なうことで、ESG投資の対象として評価を受けることからESG投資を始めることになります。
一方、投資家側の始め方としては主に2つの方法が考えられます。一つは、ESGに配慮する企業を選んで株式や債券を購入する方法であり、もう一方はESGに配慮する企業への投資を約束する投資信託を購入するという方法です。
以下に、すでにESG投資を始めている例を挙げてみましょう。
1. ESG投資の始め方、機関投資家の場合
日本では、2014年にGPIFが国連責任投資原則(UNPRI)に署名して以来、日系生保各社も資産運用にESG投資の要素を取り入れるようになりました。彼ら機関投資家がESG投資を始めた理由は、国連によるPRI(責任投資原則)の提言に則り、持続可能な発展が続く環境を金融の力で支える責任ある投資を行なうためだと言えます。
巨額の資産を長期間にわたって市場全体で運用し続ける投資家は、ESG投資の仕組みによって、市場に参加する企業らの持続可能性を高め、より永続的にリターンを得られるように環境を整える後押しをしている、と言うわけです。
こうした流れは海外でも進んでおり、例えば、カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)は、2017年の段階で示した5カ年戦略計画に紐づく36の指標の中に、「投資意思決定にESGを統合する」と明記していました。
これは彼らの資産運用とその目的を鑑みれば当然の判断だと言えるでしょう。ミレニアル世代やZ世代からの預かり資産が多くなると、彼らの老後という長期的な視点に立った運用に重きを置くようになると考えられ、目先の利益だけを優先した投資手法では後にリスクを抱える恐れがあると判断するのが妥当だということです。
つまり、企業や市場などあらゆるステークホルダーの持続可能性を追求した方がより安定的で高いパフォーマンスに繋がるだろう、との発想が下敷きになっていると考えられます。
2. ESG投資の始め方、企業の場合
企業にとって、ESG投資を始めるということは、ESG要素に対して自社が取り組む項目を明らかにし、中長期的に解消すべき課題に対してどのようなアプローチとタイミングでそれを達成していくかを定め、アニュアルレポートや統合報告書などで示し、実践するということを意味します。
特にアニュアルレポートや統合報告書の内容はこれまで発表してきた財務報告書とは性質がまったく異なるため、「どのような内容を示せばいいのか?」と考える企業も少なくないようです。
ただ、日本でも確実に優れたESG情報の開示を行なう企業は増えています。そうした流れを捉え、金融庁は、「『記述情報の開示に関する原則』 及び『記述情報の開示の好事例集』の公表について 」と題して、2019年以降、ベストプラクティスを共有しています。この情報は大いに参考になるでしょう。
また、株式会社日本取引所グループ及び株式会社東京証券取引所は、2020年3月31日に「ESG情報開示実践ハンドブック」を公表しています。こちらも、これから情報開示を行なう、あるいは、情報開示を行なっているものの内容が十分なのか不安を感じている、という時に参考になるはずです。
同グループは、このようなハンドブックを出す背景として、「①中長期的な視点で企業価値を評価する際に、ESGを考慮する投資家が増加。上場会社も、ESGに関する取組みや情報開示を拡大。②こうした流れを受けて、国内外の様々な主体が策定した、ESG情報の開示に関するスタンダード・基準、フレームワーク、ガイダンスが存在するが、それらの差異の理解や海外で策定されたものについて日本語の情報が限定的なことに上場会社の悩みがあるとの声がある(参考:「ESG情報開示実践ハンドブック」より)」といった理由を挙げています。
ここで指摘している通り、ESG情報の開示に関するスタンダードや基準、フレームワークやガイダンスはいまだ統一されておらず、これが企業の悩みの種になっていると言われています。日本国内だけでなく海外子会社を抱えるグローバルな企業ともなると、その悩みは深まるばかりでしょう。その影響は、ESGへの取り組み度合いを評価する立場にも波及すると考えられます。
ESGの情報開示は発信するだけでなく、実効性のある取り組みを伴わなければならないため、企業として最大のESGリスクがサプライチェーンにおける「人権侵害や不当競争、贈収賄」だとした場合、サプライチェーン上の企業に対する実態調査や問題発覚後の改善アクション、より透明性・信頼性の高いサプライヤーへの転換が必要となった際の対処などには膨大な時間とコスト、労力が必要になるとも想定されます。
また、人権侵害のほか、不正会計やデータ漏洩、気候変動リスクなどへの対処にあたって、各国で基準がそれぞれ異なるという厄介な問題もあります。「どのように改善達成のマイルストーンを設定するべきか?」という問題には、答えの出しようがない、との声すら聞こえてきそうです。
これに対し、Refinitivがグローバルに展開したウェビナーでは、「ESG原則を遵守して順調な経営を続けている企業の多くは、事業を展開する地域の要件の中で最も厳格な要件を満たすことのできるグローバルなポリシーを採用している」と紹介していました。このアプローチは、 対応時のハードルは高いものの結果的には効率が良いと考えられます。
海外の証券取引所や規制当局は、ESG情報の開示を義務化する流れがあり、その勢いは大きくなっています。
特に欧州では、欧州委員会の2014年指令に基づき、上場企業を中心に500人以上の従業員を抱える欧州のすべての大企業は、年次報告書に社会、労働、環境など非財務情報を詳細に開示する責任を負っていましたが、2021年4月の改正案ではその責任を負う対象が、非上場企業も含む全ての大企業*と、一部例外を除き中小企業を含むすべての上場企業に拡大することになっています。
*大企業とは?
1. 貸借対照表の合計額が2,000万ユーロ以上
2. 純売上高が4,000万ユーロ以上
3. 年間の平均従業員数が250人以上のうち、2つ以上を満たす企業。
(参考:日本貿易振興機構(ジェトロ) ブリュッセル事務所 海外調査部 欧州ロシア CIS 課「EU における企業の非財務情報開示指令案を巡る動向 」、欧州委員会「Sustainable Finance and EU Taxonomy: Commission takes further steps to channel money towards sustainable activities」)
「海外の動向だから…」との考えもあるかもしれませんが、このような指令が出ているということは、投資家側もその報告書の内容を元に投資先の選別をするものだと考えられます。そのため、広く国内外から投資を募るなら、時期はともかく、経営戦略として同水準のESGの情報開示を行なう必要性を議論する余地はあるでしょう。また、もし公表しないのであれば合理的な理由を示すよう求められる場面も出てくるかもしれません。
3. ESG投資の始め方、「これからESG投資を始める」という場合は?
ESG投資は従来型の投資手法に比べ、まだ歴史が浅い手法だと言えます。しかし、世界のESG投資額の統計を集計している国際団体GSIAが発表した「GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW2018」に示された以下の表からもわかる通り、ここ数年で世界的にも投資残高は拡大しており、日本でもその伸び幅は目を見張るものがあります。
こうした変化によって、投資手法は試行錯誤が進み、「ESG投資を行なう際に本当に必要な情報とはどのようなものか?」という問いにいくつものアイディアが出され、内容が洗練されるようになっています。
リフィニティブは、ESGの3つの柱にまたがる10の主要テーマ(排出量、環境製品の革新性、多様性と受容性、人権、株主など)について、企業の相対的なESGパフォーマンス、コミットメント、効果を透過的かつ客観的に算出するように設計されたESGスコアの提供などを通し、持続可能な社会づくりに貢献しようとする企業の成長機会と顧客本位の業務運営を徹底する金融機関を支え、世界の金融コミュニティに貢献してまいります。
II.まとめ
ESG投資は従来型の投資手法に比べ、まだ歴史が浅い手法だと言えます。しかし、世界のESG投資額の統計を集計している国際団体GSIAが発表した「GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW2018」に示された以下の表からもわかる通り、ここ数年で世界的にも投資残高は拡大しており、日本でもその伸び幅は目を見張るものがあります。
こうした変化によって、投資手法は試行錯誤が進み、「ESG投資を行なう際に本当に必要な情報とはどのようなものか?」という問いにいくつものアイディアが出され、内容が洗練されるようになっています。
リフィニティブは、ESGの3つの柱にまたがる10の主要テーマ(排出量、環境製品の革新性、多様性と受容性、人権、株主など)について、企業の相対的なESGパフォーマンス、コミットメント、効果を透過的かつ客観的に算出するように設計されたESGスコアの提供などを通し、持続可能な社会づくりに貢献しようとする企業の成長機会と顧客本位の業務運営を徹底する金融機関を支え、世界の金融コミュニティに貢献してまいります。
参考文献
・リフィニティブ:コンプライアンスInsight2022年夏号
・国際団体GSIA : GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW2018
・日本貿易振興機構(ジェトロ)ブリュッセル事務所 海外調査部 欧州ロシア CIS 課 :Sustainable Finance and EU Taxonomy: Commission takes further steps to channel money towards sustainable activitie
・株式会社日本取引所グループ及び株式会社東京証券取引所 : ESG情報開示実践ハンドブック
・金融庁 : 「記述情報の開示に関する原則」及び「記述情報の開示の好事例集」
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