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2021年7月28日
ESG投資の今後とは?傾向と展望を3つのポイントで詳しく解説

ESG投資の今後とは?傾向と展望について3つのポイントで詳しく解説していきます。
環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素を考慮して投資先を選別するESG投資について、今後の傾向と展望を想像することは、企業・金融機関だけでなく、私達の生活や将来に深く関わるホットイシューです。他方、まだ新しい投資手法であるESG投資はいまも改善が続いており、変化が激しい領域だとも言えます。
では、今後どのような出来事が起こりうるのか、ここでは3つのポイントを整理しておきましょう。
I. ESG投資の今後とは?傾向と展望について
ESG投資において、議論の的として考えられるのが「評価基準のグローバルスタンダードが確立するのか?」「企業のESGへの取り組み度合いの評価と確認、テクノロジーの発展」「ESGに熱心であるように見せかける◯◯ウォッシングをいかにして排除するか?」といったことです。
以下に詳しく解説していきます。
1. ESG投資の今後とは?傾向、世界的な評価基準が定まる可能性について
現在、ESG投資に関する重要なソースとして、企業の非財務情報やESGの開示情報が用いられています。しかし、時には何十ページにも及ぶ資料の内容を企業ごとに逐一精査することは、膨大な時間とコスト・リソースが必要になり、現実的ではないでしょう。
そこで活用されるのが、第三者機関がESGへの企業の取り組みや効果(パフォーマンス)を整理・分析したESGスコアです。リフィニティブにおいても、以下の2つの総合的なESGスコアを組み込んだ「リフィニティブ・リッパー・ファンドESGスコア」を提供しています。
1. ESGスコア
公表済みの検証可能なレポートのデータに基づき企業やファンドのESGパフォーマンスを測定
2. ESG複合スコア
ESGスコアとESG論争(ネガティブイベントの影響)を重ね合わせることで、企業の持続可能性への影響や行動をほぼリアルタイムで総合的に評価
ESGスコアはESG投資を行なう際に有用な参考情報である一方、「同じ企業を数種類のESGスコアで評価した場合、結果が同じにはならないことがある」との指摘があります。
そのため、ESGスコアを利用する場合は、スコアを提供している組織がどのような評価項目を設定し、評価ロジックを根底に置いているかといった、ESGスコアが導き出される過程に着目し、最も考え方が近いものを採用するといった判断が必要だと言えます。
他方、国内外で「ESG情報開示に関してスタンダード(基準)やフレームワーク、ガイドライン等がさまざまに策定されているので、企業が『結局何を開示すればいいのかわからない』と混乱している」との指摘がなされています。
そうしたことを受け、2014年にICGN (International Corporate Governance Network : 国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク) の年次総会で、IIRC(国際統合報告評議会)が事務局となって「Corporate Reporting Dialogue (CRD)」を設立。ESGに関する情報開示のフレームワークやスタンダードを作成する8団体*による共同プロジェクトとして、各団体のフレームワーク等を整理・調整し、効率的に情報を開示できるよう一貫性や比較可能性を高めていくことが決まりました。
(参考:経済産業省企業会計室 レポーティングに関する国際動向について 事務局資料)
* CDP、CDSB、GRI、ISO、IIRC、SASB、IFRS、FASB(オブザーバー)
CRDの「Better Alignment Project」は、2019年9月、TCFD (気候関連財務情報開示タスクフォース) 提言と各レポーティングフレームワーク間の整合性を示すレポート「Driving Alignment in Climate-related Reporting」を発表し、TCFDが提示する「効果的情報開示の7原則」は各機関のスタンダードと矛盾しない、といったことが確認されました。
(参考 : CRD「Driving Alignment in Climate-related Reporting」)
今後もこの活動は続けられることから、「どのスタンダード(基準)やフレームワーク、ガイドラインに沿って対応すればいいのか?」という問題への解決の糸口が見つかる可能性が考えられます。
2. ESG投資の今後とは? 展望、今後の展望、テクノロジーの発展が企業のESG取り組み度合いの評価をより明らかにする?
このコロナ禍によってリモートワークが普及したことで、企業の基幹システムやそれに連なる業務関連の各システムを根本的に考え直す必要があることを痛感した企業も少なくないでしょう。そうしたことを受け、デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が経営戦略の最優先課題になっていると推察されます。
このようなテクノロジーの浸透は、ESG投資とその取り組みの透明性を向上させる追い風になると考えられます。これまで技術的に難しかった調達から製造、物流といったサプライチェーン全体のトレーシングを改善してマネジメントの質を高める可能性や、二酸化炭素の排出量をより精緻に算定したり、製品の生産時にかかる二酸化炭素や資料電力量を追跡することも今後はよりクリアで正確にできるようになるというわけです。
他方、こうした事柄を可能にするための投資も必要になるかもしれません。また、詳細な情報を出そうにも出せない企業にとっては、評価を落とし、投資が得づらい状況に追い込まれるおそれもあります。そうした意味でも、DXとESGへの取り組みは並行して行われるべきだと言えるでしょう。
3. ESG投資の今後とは?SDGsウォッシュ、ブルーウォッシュ、グリーンウォッシュなどに厳しい視線が
ESG投資は従来型の投資手法に比べ、まだ歴史が浅い手法だと言えます。しかし、世界のESG投資額の統計を集計している国際団体GSIAが発表した「GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW2018」に示された以下の表からもわかる通り、ここ数年で世界的にも投資残高は拡大しており、日本でもその伸び幅は目を見張るものがあります。
こうした変化によって、投資手法は試行錯誤が進み、「ESG投資を行なう際に本当に必要な情報とはどのようなものか?」という問いにいくつものアイディアが出され、内容が洗練されるようになっています。
リフィニティブは、ESGの3つの柱にまたがる10の主要テーマ(排出量、環境製品の革新性、多様性と受容性、人権、株主など)について、企業の相対的なESGパフォーマンス、コミットメント、効果を透過的かつ客観的に算出するように設計されたESGスコアの提供などを通し、持続可能な社会づくりに貢献しようとする企業の成長機会と顧客本位の業務運営を徹底する金融機関を支え、世界の金融コミュニティに貢献してまいります。
II.まとめ
ここまで述べてきた通り、ESG投資の現場では多くの変化が起こっています。また、その変化は、国や業界等によってスピードも内容も異なり、罰則付きの規制なのか努力義務なのかも違いが出てくると考えられます。
リフィニティブは、環境、社会、ガバナンスの三つの柱にまたがる10の主要テーマ(排出量、環境製品の革新性、多様性と受容性、人権、株主など)について、企業の相対的なESGパフォーマンス、コミットメント、効果を透過的かつ客観的に算出するように設計されたESGスコアをはじめ、ESGインデックスや幅広い金融分析データなどの提供を通し、持続可能な社会づくりに貢献しようとする企業の成長機会と顧客本位の業務運営を徹底する金融機関を支え、世界の金融コミュニティに貢献してまいります。
参考文献
・経済産業省企業会計室国際動向に関するレポーティング: 事務局資料
・CRD : Driving Alignment in Climate-related Reporting
・サステナブルファイナンス有識者会議 : サステナブルファイナンスにおける情報開示欧州等の動向とわが国への示唆
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