2023 年 12 月 15 日

グリーン経済は 6.5 兆億米ドル規模へ

株式市場の行く末を左右する重要なセクターに

2030 年にグローバル株式市場全体の 20% を目指す。地政学的な分断リスクにも着目。

リフィニティブ編集チーム

I. SUMMERY

  • グリーン経済の時価総額は 6 兆 5,000 億米ドルに: 22 年の停滞を経て、23 年は好調に。時価総額は株式市場全体の 9.2% に上る
  • 50 カ国に広がるグリーン収益: グリーン経済は先進国、新興国 50 カ国以上から成る。グリーン・エクスポージャーでは、グリーン製品の工場が立地する中国が 1 位に
  • グリーン・エクイティの投資特性: グリーン・エクイティのパフォーマンスは急上昇中だが、ボラティリティとトラッキング・エラーが大きい
  • 地政学、産業政策から見たグリーン経済: グリーン経済はエネルギー安全保障や、レアアースの確保など政治的にも重要な意味を持ち、地政学上の重要な着眼点になっている

拡大を続けるグリーン・エコノミー (以下、グリーン経済) 。インフレや各国での紛争による失速を経て、23 年には時価総額が株式市場全体の 9.2% に達しています。これからのグリーン経済は、どのような方向性になるのか。サステナブル投資のリサーチャーによる、グリーン経済に関する分析内容を紐解いてみましょう。

 

II. グリーン経済の時価総額は 6 兆 5,000 億米ドルに

2023 年 11 月末から始まった COP28 も化石燃料からの脱却を進める事に合意する文書の採択をもって閉幕しました。会期中には 570 億ドルを超える誓約やコミットメントが発表され、グリーン・エコノミーへの移行促進が確認されました。

近年急拡大しつつあるグリーン経済ですが、2022 年はインフレや金利の上昇、地政学的緊張で苦戦を強いられました。2023 年はそんなマイナスの機運を克服し、上半期にかけて急速に回復。グローバル株式市場で 4 番目に大きい単独セクターへと成長しています。現在、グリーン経済の時価総額は 6 兆 5,000 億米ドル。これは株式市場全体の 9.2% を占め、2025 年までにはマーケット全体の 10% を超える見込みです。

しかしネットゼロ (温室効果ガスの排出量と吸収量を調整し、最終的な排出量をゼロにすること) を達成するには、2050 年までに 109~275 兆米ドルの投資が必要だとされています。2015 年の COP21 パリ協定で採択された「1.5℃シナリオ」 (産業革命前に比べ気温上昇を 2℃ より低く保ち、1.5℃ に抑える努力も行う) への移行には、グリーン経済のさらなる成長が期待されます。2030 年までには、グリーン市場の時価総額を株式市場全体の約 20% まで引き上げなければなりません。

債券を取り巻く投資環境の中長期的な見通しについては LSEG Lipper のアナリストによるこちらのレポートを参照ください。

 

III. 50 カ国に広がるグリーン収益

次に、グリーン市場を形成する国・企業について見てみましょう。

現在、グリーン経済は、50 カ国を超える先進国市場と新興国市場で構成されています。時価総額で最大のシェアを誇るのは米国、次いで中国が 2 位となっています。一方、グリーン・エクスポージャー (環境に配慮した事業活動を行うことによって、環境関連のリスクや機会にどの程度影響を受けやすい状態にあるか) については、米国は 9 %、中国は 13 %です。グリーン・エクスポージャーは、株式市場の時価総額には比例しないため、再生可能エネルギーやバッテリー製造のサプライチェーンにおいて重要な役割を担う中国の方が高いという結果になっています。

 

企業別に見ると、時価総額の 4 分の 3 を占めるのが大企業で、企業数ではその逆で中小企業が 4 分の 3 を占めています。グリーン・エクスポージャーは企業規模に比例し、大企業の方が大きいということが明らかになりました。

 

セクター別のグリーン・エクスポージャーを見てみると、自動車・部品セクターが圧倒的に高く、2018 年の 3 倍 (48%) まで上昇しています。次いで、公共事業セクター (34%) の割合が上昇。背景として、電気自動車 (EV車) や、再生可能エネルギー発電関連の公共事業が急速に増えたことが考えられます。

ほかにも、テクノロジー (クラウド・コンピューティングなど) 、工業製品・サービス (スマート・グリッドなど) のグリーン・エクスポージャーが高まっています。グリーン経済を構成するセクターは非常に多様化していることが分かります。

 

IV. グリーン経済の投資特性

では、グリーン経済はどのような投資特性なのでしょうか。

グリーン・エクイティ (FTSE EOAS) とグローバル株式市場 (FTSE Global All Cap) の長期パフォーマンスを比較してみると、グリーン・エクイティであるFTSE EOASは 2008 年 1 月から 2023 年 6 月までにトータル・リターン・ベースで 76% アウトパフォームしています。

 

グリーン・エクイティの特徴は、主要なエクスポージャーが特定の産業に集中しているため、ボラティリティとトラッキング・エラーが大きい点にあります。グローバル株式市場と 12 カ月サイクルを比較すると、グリーン・エクイティは ‐10% ~ +10% で推移。中でも 2020/2021 年のコロナショック直後は、バリュエーションが急上昇し、2021 年には市場全体よりも 40% 高まっています。

グリーン経済への資本フローは増加傾向で、2021 年のグリーン・テーマ型ファンドへの累積フローは約 800 億米ドルに達しました。グリーンボンド市場も 2023 年には大きく回復し、発行額が増加しています。

 

※ 詳細は 2023 年の当社レポート「グリーン経済への投資」をご参照ください。

※ 投資家のみなさまは、加重平均グリーン収益が全体的に増加するよう、銘柄のウェートを高めることができます。詳細は、「加重平均グリーン収益 (WAGR) : ポートフォリオ構築への気候ソリューションの統合」をご覧ください。グリーン経済銘柄へのエクスポージャーに的を絞りたい場合は、グリーン収益が特定の閾値を超える銘柄のみが含まれるグリーン・テーマ型のポートフォリオをご利用可能です。

 

V. 地政学、産業政策から見たグリーン経済

グリーン経済は、すでに経済成長、雇用、エネルギー供給の源泉となっています。また、地政学的にも極めて重要な考慮事項だとみなされています。各国の政府は、グリーン経済へ投資することで、エネルギー安全保障を強化し化石燃料依存から脱却するための先行投資ができると考えているようです。

また、グリーン経済は 21 世紀における産業政策の重要な1領域にもなっています。ドイツ、日本、米国、中国はグリーン・テクノロジーが産業輸出を加速させると捉え、手厚い補助金制度や輸入制限などの貿易措置を行っています。ドイツの太陽光電力の固定価格買取制度、中国の EV 割り当てクオーター制度といった政府支援がその代表ですが、22 年 8 月のインフレ抑制法 (米国) 、23 年 3 月のネットゼロ産業法 (EU) によってさらに拡大しています。

日本では、2021 年に「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定し、予算、税、金融、規制改革・標準化、国際連携など、カーボンゼロを成し遂げるために政策を総動員すると掲げています。具体的には、電力の脱炭素化と単一エネルギー依存からの脱却、電化社会を支えるデジタルインフラや半導体・情報通信産業を成長分野だと位置づけ、政策面でサポートしています。また、民のイノベーションを官が規制や制度面で支援する方針を表明しています。

グリーン経済が拡大するにつれ、新たな分断も生じはじめています。グリーン製品やサービスのほとんどが先進国で開発されていますが、実際の製造や工場の大部分は中国です。リチウム、コバルト、レアアースといった原材料の産地が特定の地域に集中しているため、各国は保護主義的なアプローチでサプライチェーンの国内回帰を目指しています。しかしインフレの現状では、グリーン産業におけるグローバル・サプライチェーンのデカップリング (分断) が、地政学的なリスクを高め、コストを上昇させる可能性もあると言えるでしょう。

INDEX INSIGHT

グリーン経済への投資 2023

次の成長段階へ

LSEG: グリーン経済への投資 2023 - 次の成長段階へ

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