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2023 年 8 月 10 日

ロングオンリー・ファンドの取引執行を最適化する方法

進化する取引ワークフロー

本稿は英国現地時間 2023 年 7 月 3 日に投稿された "How can long-only fund managers optimise execution?" の邦訳です。

Chris Jenkins
Managing Director, TORA

注文・取引執行管理システムの機能とリアルタイム取引コスト分析  (TCA)  によって取引執行をどのように最適化できるかについてお話ししたいと思います。

アルゴ・ホイールは、取引執行の最適化、マーケット・インパクトの最小化、取引コストの削減に寄与します。リアルタイム TCA を組み込めるということは、アルゴ・ホイールの最も重要な側面と見なすことができます。

本ブログは、ロングオンリー市場に焦点を当てた全 2 部からなるシリーズの後編です。前編は『ロングオンリー・ファンドが求める取引システムとは』をご覧ください。

後編では、ロングオンリー・ファンドの取引システム要件に焦点を当て、ロングオンリー・ファンドが注文・取引執行管理に関する特定の機能からどのような恩恵を受けられるかを詳しく見ていきます。特に、リアルタイム取引コスト分析  (TCA)  がどのようにアルゴ・ホイールの有効性を高め、執行を最適化し、アルゴ・ホイールを強化できるかについて掘り下げます。リアルタイム TCA は、アルゴ・ホイールの最も重要かつ強力な側面の 1 つと言えますが、業界内でこうした機能を提供できるアルゴ・ホイールはほとんどありません。

 

 

I. アルゴ・ホイールとその限界

アルゴ・ホイールを取引執行の最適化のみならず、マーケット・インパクトの最小化と取引コスト削減のためのメカニズムとして利用することは近年、バイサイド・トレーダーの間では比較的一般的になっています。

アルゴ・ホイールの人気の高まりにはいくつかの理由があります。第一に、アルゴ・ホイールは、取引の意思決定における人間のバイアスと感情の影響を軽減できます。特定の取引戦略やシステムへの過度な固執を避けるために、アルゴ・ホイールを利用することでトレーダーは絞り込まれたアルゴリズムの中から選ぶことができます。第二に、アルゴ・ホイールには通常、さまざまな市場環境や取引戦略に対応する幅広いアルゴリズムが含まれているため、執行品質を改善できます。第三に、アルゴ・ホイールは多くの場合、個々のトレーダーまたはデスクに固有のニーズや好みに合わせてカスタマイズすることが可能です。例えば、トレーダーは、どのアルゴリズムをアルゴ・ホイールに組み込むかを選択し、執行したい取引の種類のパラメーターを設定できます。

しかし、アルゴ・ホイールには限界があります。通常、アルゴ・ホイールには限られた数のアルゴリズムが事前にプログラムされていますが、これらのアルゴリズムはあらゆる市場環境や取引戦略に適しているとは限りません。これは、選択されたアルゴリズムが現在の市場環境に適していない場合に、トレーダーが取引機会を逃したり損失に直面したりする可能性があることを意味します。また、アルゴ・ホイールはランダムな選択プロセスに依存していることが多く、アルゴリズム選択のコントロールが制限されます。もう 1 つの限界は、市場のボラティリティの高まりや予期せぬ事象の発生時に、アルゴ・ホイールが市場環境の急変への適応に苦戦する可能性があることです。これも予想外の損失につながりかねません。

アルゴ・ホイールがロングオンリーのファンド・マネージャーにとって最も効果的な取引執行ツールであるためには、理想的には次の 3 つの重要な要素を備えている必要があります。第一に、事前に定義されたルールに基づき、人間の介入なしに、注文をブローカーへ自動的にルーティングするメカニズムです。ほとんどのアルゴ・ホイールはこの機能を備えています。第二にランダマイザーです。これはブローカーをランダムに選択し、すべてのブローカーが均等な量のフローを受け取るようにします。この機能もほとんどのアルゴ・ホイールが備えており、一部のアルゴ・ホイールは、例えば報酬や手数料を考慮した重み付けのオプションも提供しています。第三の要素は、あまり一般的ではありませんが、おそらく最も重要なもので、リアルタイム TCA データを扱う機能です。

 

II. リアルタイム TCA を組み込む

通常、ロングオンリーのファンド・マネージャーは、取引コスト分析を取引後または T+1  (翌営業日)  ベースで実施し、複数の目的に使用しています。その目的とは、取引戦略と執行方法の有効性を評価すること、取引コストについての理解を深めること、より十分な情報に基づいた意思決定を行うこと、そして最終的には全体的な取引パフォーマンスを改善することです。TCA は、企業が最良執行に関する規制上の義務を果たすための重要なツールにもなっています。

TCA プロセス自体には、通常、取引執行データ  (注文が取引された時間、規模、価格など)  の収集、直接および間接コストの分析  (例えばスリッページなど) 、出来高加重平均価格  (VWAP)  または時間加重平均価格  (TWAP)  などのさまざまなベンチマークに対する評価が含まれます。

この種のポストトレード TCA は確かに有用なツールですが、各注文に最適なベニュー、ブローカー/カウンターパーティーやアルゴリズムを取引前に決定できるように、リアルタイム TCA 指標を利用し始める先見性のあるロングオンリーのファンド・マネージャーが増えています。

このアプローチが威力を発揮するのは、リアルタイム TCA のアウトプットが「インテリジェント」なアルゴ・ホイールに統合される場合です。すなわち、データを取り込み、事前に定義されたパラメーターと調整可能なパラメーターの両方を使用して、注文が執行される条件と同様の条件下でさまざまなベニュー、ブローカー、アルゴリズムがどのように実行される可能性が高いかに基づき、必要なルーティングの決定を行うことができる場合です。これは、例えば予想流動性、参加者、スプレッド、市場のリアルタイムなボラティリティ、出来高の消化などの要因を考慮することを意味します。もちろん、アルゴ・ホイールは、トレーダーがこうした指図を承諾するか、上書きする機能も提供する必要があります。

ここでの重要なポイントは、この種の執行機能はカスタマイズ可能であるべきだということです。すべてのファンドはそれぞれ異なるため、TCA とアルゴ・ホイールは、企業と個々のトレーディング・デスクの両方のニーズに合わせてカスタマイズできる必要があります。特に、株式、債券、外国為替、上場デリバティブに関するアルゴリズム執行ワークフローは著しく異なります。

 

III. まとめ

以上のように、リアルタイムの実用的な TCA をアルゴリズム執行プロセスに取り込むことで、ロングオンリー・ファンドのマネージャーは、現在の市場環境に最適なアルゴリズム、ブローカー、ベニューの組み合わせを常に使用し、執行パフォーマンスを改善できます。さらに、この種の機能により、トレーダーのワークフローが大幅に簡素化されるため、より難易度の高い業務に注力する時間を確保できるというメリットもあります。

 

IV. よくある質問 (FAQ)

Q. アルゴ・ホイールの人気が高まっている理由は?
A. アルゴ・ホイールは、取引の意思決定における人間のバイアスと感情の影響を軽減できます。

 

 

本稿は英国現地時間 2023 年 7 月 3 日に投稿された "How can long-only fund managers optimise execution?" の邦訳です。

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