1. ホーム
  2. リフィニティブ・ジャパン ブログ記事一覧
  3. 2023 年の投資環境 中期見通し

2023 年 7 月 24 日

2023年の投資環境 中期見通し

〜市場を動かす4つのトレンドを専門家はどう見ているか?〜

リフィニティブ編集チーム

各国の中央銀行による金融引き締め政策が実を結び、インフレ率が目標水準に向かい始めるようになりました。これにより、株式や債券の動きにまた新たな変化が見られると考える投資家は少なくないはずです。

では、2023 年の投資環境を中期で見通した場合、どのような課題や機会が考えられるのか? これをテーマに、LSEGリッパー・リサーチ・チームの責任者 4 名は、2023 年 6 月、「投資環境の中期見通し〜2023年、市場を動かす4つの主要トレンド〜」と題したレポートを発表しました。本稿は、そのレポートに記された内容をコンパクトにまとめたものです。

 

I. 2023年にも通用する投資の公理とは?

冒頭、レポートの主旨を執筆した、ロバート・ジェンキンス (リッパー・リサーチ・グローバルヘッド) は、「地政学的にもマクロ経済的にも波乱含みだった 2022 年は、株式も債券も史上最悪のパフォーマンスを記録した」と切り出した上で、投資家へのメッセージとして次の内容を示しました。

 

コロナ禍以降に顕著になったインフレを抑制するべく、米国連邦準備制度理事会 (FRB) は積極的に利上げを行った。これにより、株式・債券価格は大きな影響を受けたが、中でもテクノロジー・通信・消費セクターなど成長志向銘柄に投資していた投資家達は、年初来で 20% 近い損失を経験したと考えられる。 難しい状況を経験した関係者らだが、このところ、「インフレピークは過ぎ去っており、利上げも落ち着くだろう」との見方を示すようになった。今後は、FRB 自身がそれを追認するかどうかが焦点になるだろう。 一方、2023 年のトレードにおける新たな「安全な避難所」として、ハイテクや通信、消費、つまりアップルやマイクロソフト、メタ、エヌビディア、テスラなどの大型成長株を取り込むことになると見られる。景気回復が叶えば、これらはキャッシュを生み出す強力な企業になりうる、との判断がなされているというわけだ。 利上げが続く最中には「景気後退」が懸念されていたが、さまざまなデータを見る限り、その懸念は当たらないと言えそうだ。つまり、「ソフトランディング」が見込まれる今日、株式市場や債券市場についてやや楽観的な見方もできる兆しが出てきたということだ。 ただし、注意は必要だ。投資家は、今こそ古くからの投資の公理である、「分散投資し、流動性を維持し、その道を進む」という言葉を思い返す必要があるだろう。

 

II. 60/40 ポートフォリオは今後も有効か?

ロバートの言葉を受けて、トム・ロージーン (リッパー・リサーチ・サービス部) は、資産の 60% を株式に、40% を債券に振り分ける「60/40ポートフォリオ」という分散投資の原則論の今日における有用性についての見方を示しました。

ここで改めて「60/40ポートフォリオ」の前提を押さえておきましょう。

これは、「すべての資産クラスが同時に下落するのは異例である。リスクを減らし、リターンを平準化するためにも、株式と債券のように相関性が低い、あるいは相関性が無い資産を利用してポートフォリオを組むことは理にかなっている」という考え方です。

ただ、株式・債券ともに大きな損失が発生した 2022 年のマーケット動向をリアルに体験した人々の中からは、「前提が崩れる今、『60/40ポートフォリオ』は成立しないのではないか」という疑問の声が出てきたのも事実です。

トムは、多くの投資家が抱いている疑問を受け、「『60/40ポートフォリオ』の有用性を考えたが、答えは『Yes』だ」とし、その理由を次のように挙げています。

 

ある証券や資産クラスが大きな打撃を受けたとしても、ポートフォリオの他の何かが上昇する (少なくともそれほど下落しない) というのは、ポートフォリオ分散投資の核心だ。 たとえば、債券と株式の相関は一般的にはマイナスだと言える。しかし、過去35 年間で見てみると、この 2 つの資産クラスが月単位でプラス、あるいは高い相関を示す時期が長く続いたケースはある。 一般的に知られている通り、景気低迷による株安が起きた場合、景気浮揚のために利下げが行われることが多く、それによって株式と債券の間にマイナスの相関関係が生まれる。ただし、インフレが株価下落の要因である場合、中央銀行による利上げが債券価格の圧迫を促し、企業収益の減少に繋がることがあるため、結果として株式と債券の間に高い相関関係が生まれることもある。これが2022 年の“史上最悪のパフォーマンス”を生んだ、というわけだ。 では、2023 年も同じような状況が続くかというと、そうとはならないだろう。景気後退の芽が摘まれたわけではないが、データを見る限り、過去 35 年間で株式と債券のリターンが同じ年にマイナスになったのは 4 年しかない。 また、ポートフォリオ分散投資という意味で言うなら、たとえば、スタイル (グロース対バリュー) 、資本構成 (小型株対大型株) 、債券のデュレーションや満期 (短期対長期) 、クオリティ (投資適格対高位利回り) 、あるいはコモディティ、不動産投資信託 (REIT) 、ヘッジに似た (オルタナティブ) 戦略などのオルタナティブ資産クラスを導入して十分に分散させたポートフォリオはボラティリティを低下させながらリターンを増加する可能性を広げるはずだ。 大原則として、ポートフォリオの分散は長期的な戦略であり、損失を完全に軽減することを意図したものではない。投資家のリスク許容度に応じて、分散を80/20 や 60/40、20/80 にするなど、より高度な分散をすることが、この先も「海が荒れた時に必要なバラスト (安定材料) になるはずだ」。

 

III. バリュー投資とグロース投資

トムの指摘にもある通り、投資家は今日、複数のモデルからより多様なポートフォリオを組むことができます。これについて、デトレフ・グロー (リッパー EMEA リサーチ責任者) は、「ポートフォリオ内の単一の証券を均等に加重したり、時価総額を使ってポジションの大きさを決定するような構造的なプロセスの他に、ポートフォリオ内の保有銘柄の加重を決定する裁量的な方法もある」と述べています。

この時、実際に投資家が知りたくなるのは、「資本市場におけるバリュー投資とグロース投資にトレンドがあるかどうか?」といったようなより踏み込んだ内容だと想像します。

これについて、前出のデトレフは、各インデックスの計算方法について見た上で、① と ② を行いました。

  1. ラッセル 1000 指数を選び、ラッセル 1000 バリュー指数とグロース指数の相対パフォーマンスを計算する
  2. ラッセル 1000 バリュー指数とグロース指数の長期パフォーマンスを分析する

この結論として、「バリュー株がグロース株より優れたパフォーマンスを示す時期もあれば、その逆の時期もあることがチャートから読み取れる。つまり、投資家がポートフォリオをどちらか一方に傾けることは、時間の経過に伴うスタイル・シフトによる追加リターンを獲得するために理にかなっている可能性がある」との見方を示したデトレフ。

さらに、ラッセル 1000 グロース・インデックスとラッセル 1000 バリュー・インデックスの長期パフォーマンスを詳しく見た上で、

「ラッセル 1000 グロース・インデックスがラッセル 1000 バリュー・インデックスに比べて大幅なアウトパフォームを示した期間は 2 回しかない。いわゆる『ドットコム・バブル』 (1999 年 9 月 30 日~ 2000 年 7 月 31 日) とコロナ禍前後 (2019 年 12 月 31 日~ 2023 年 3 月 31 日) である。ドットコム・バブル期にグロース株がアウトパフォームした理由は明らかであるが、コロナウイルス危機前後とそれ以降におけるグロース株のアウトパフォームには異なる理由がある」とし、その理由をデータとともに解説したのちに、次のように結論づけました。

グロース株やバリュー株のトレンドはあっても、一方の投資スタイルから他方の投資スタイルへシフトするタイミングを見つけることはほぼ不可能である。バリュー株からグロース株へ、あるいはその逆へとシフトするためには、投資家は現在の市場の勢いを徹底的にリサーチする必要がある。とはいえ、市場の勢いがすでに変わり始めているにもかかわらず、トレンドが予想以上に長期化する場合もあるため、投資家はマーケット・タイミングを図る際に忍耐強くなる必要があるかもしれない。 したがって、バリュー投資とグロース投資に関する市場トレンドの変化を活用する最善の方法は、それぞれの投資家のニーズに最も適した投資スタイルをポートフォリオの中核に選択し、もう一方のスタイルをポートフォリオのサテライト部分に割り当てることかもしれない。

 

 

「投資環境の中期見通し〜2023 年、市場を動かす 4 つの主要トレンド〜」

 

IV. 中国経済は 2023 年以降も存在感を示すことになるか?

ロバート、トム、デトレフの 3 名による世界経済動向全体の見通しに対し、ザブ・フェン (リッパー・アジア・パシフィック代表) は、特に中国を中心に、米中摩擦の“回避地”となり得るベトナム、世界一の人口を抱えるインドの動向について、意見を示しました。

まず気になるのが、中国経済の 2023 年以降の見通しについてです。

これまで、世界経済の成長を牽引してきた中国では、新型コロナウイルス感染症蔓延に伴う「ゼロ・コロナ政策」によって大きな経済損失を受けたものの、政策転換や“リベンジ消費”のような反動によって、大幅な回復を見せています。

ただし、「楽観視できるものではない」というのは周知の通り。ここからは、パンデミック後の回復の勢いが弱まるにつれて、長引く課題が再び顕在化する可能性を織り込む必要があるほか、新築住宅販売と全体的な価格が回復したとはいえ、住宅市場の課題等も残っています。

ザブは、そうした中で今後の中国経済について、2023 年 4 月 30 日現在のLSEGリッパーによるデータをもとに、次のようにまとめています。

 

中国の中央銀行である中国人民銀行は、中期貸出枠を通じて銀行への流動性支援を拡大したが、貸出金利は据え置かれた。中国政府は、消費を刺激するような大きな措置を取ることを控えており、投資と経済成長を促進するためのインフラ支出に大きく依存している。 中国国家統計局によると、4 月の中国の個人消費と産業活動の成長ペースは予想を下回り、中国経済の回復が勢いを失いつつあることを示している。また、4 月の若者の失業率が 20.4 %と過去最高を記録したことは、労働力人口全体が減少しているにもかかわらず、経済が依然として新規労働者の吸収に苦労していることを示している。 中国には、現在の景気回復の勢いを維持するための強力なマクロ政策が必要であると同時に、時期尚早の引き締めを回避して中立的な財政政策を実施する必要があると我々は考えている。その一方で、中国経済は中長期的に消費へとリバランスし、投資からの成長をシフトさせる。 全体として、中国経済の状況は複雑で不安定である一方、不十分な内需は依然として顕著であり、景気回復の基盤はまだ強固ではないことに投資家は注意を払う必要がある。

 

V. 台頭するインドと注目が集まるベトナムの今後は?

他方、政府によって、首相のガティ・シャクティ (複合一貫輸送国家基本計画) 構想、物流開発、産業回廊開発などのインフラ整備への強力な推進が行われているインドは、「インドは世界の主要経済国の中で最も急成長している国のひとつであり続けている」との見方がされています。国際通貨基金 (IMF) も、2023-24 年度の世界経済成長率 2.8% に対し、インドは 5.9%、今後 5 年間の平均成長率は 6.1% と予想しているほどです。

インドの経済成長の特徴には、政府による推進策だけでなく、比較的堅調な国内消費と世界需要への依存度の低さも挙げられるでしょう。国連の人口推計によれば、インドは世界で最も人口の多い国となっており、これらが相まって「今後数年間、好調な勢いを維持・加速させ、中国とともに世界経済を活性化させる重要な役割を果たすと我々は確信している」と、ザブは述べています。

一方、輸出主導型の経済が特徴であるベトナムも、注目すべきエリアになっています。主に外国直接投資 (FDI) が原動力となっており、低い労働コストと 15 の自由貿易協定を結ぶ開放的な経済は大きな魅力です。

加えて、半導体規制に象徴される米中間の貿易対立の煽りを受けてサプライチェーンの再編を余儀なくされている企業にとって、ベトナムは中国に代わる生産拠点としてさらに注目が集まっています。

 

VI. 欧州・米国・アジアの債券投資家の未来とは?

ここまで触れてきた株式市場の見通しに対し、債券市場についても触れたのが、リッパー EMEA リサーチ責任者であるデトレフと、シニア・リッパー・リサーチ・アナリストのジャック・フィッシャー、そして、アジア太平洋地域を統括するザブの 3 名です。

債券利回りがプラスに転じる中、欧州、米国、アジアの債券専門家は、不安定な市場を短期的・中期的にどのように見ているのか? レポートでは詳細に語られています。

たとえば、デトレフは、ユーロ圏の再建価格が下落傾向にあることやイールドカーブが逆転現象を起こしていることに触れ、「投資家は現在、中長期の債券ではなく、デュレーションが非常に短い債券を買う方が理にかなっている」とした上で、中長期のユーロ債を買う“意味”に触れ、次のような見方を示しています。

 

金利上昇は企業や消費者の資金調達コストの上昇につながるため、この議論にとどまらない話題として、金利上昇が経済に与える影響がある。金利上昇は企業や消費者の資金調達コストの上昇を招くため、収益性や新規プロジェクトに対する資金支出能力・意欲に影響を与える可能性がある。

 

一方、ジャックは、「1972 年以降、連邦準備制度理事会 (FRB) が FF 金利を高いペースで引き上げたのは、他に 1 回 (1980 年 10 月) だけである。ご存知のように、高水準での金利引き上げは、事業コストに影響を及ぼし、そうすることで経済全体の需給に影響を及ぼす。このような大幅な利上げペースでは、意図した結果と意図しない結果の両方が見られるに違いない」と問題提起し、これから“何が起こるのか?”に対し、いくつかのポイントをデータを伴って考察しました。

その上で今後の見通しについて、次のようにまとめています。

 

短期的には、イールド・カーブの短い部分が上昇するたびに、国債や期間の短い債券投資が資金を集め続けるだろう。これは、連邦準備制度理事会 (FRB) による最初の利上げ休止または利下げが見られるまで続くはずだ。投資家がより長い投資期間を志向するにつれて、投資適格債やマルチセクターのアクティブ・マネジャーに資金が流入し始めている。 私の予想では、アクティブ・コア・ボンド・ファンドとマルチセクター・インカム・ファンドが、課税対象債券ファンドの資金流入の上位 2 分類となり、2024 年末にはトップ・パフォーマンス分類になる可能性がある。

 

アジア太平洋地域の各中央銀行の動向に触れたザブは、特に中国について、「世界的に見てもインフレ問題を抱えていない数少ない市場のひとつであり、景気減速を食い止めるための金融緩和の余地があることを反映している」と述べた上で、これまでの流れから市場がどのような予想をしているかに言及し、次のような傾向に触れています。

 

保守的な投資家にとっては、防衛的なポジションとして、国債など、より質の高い中国債券へのエクスポージャーを配分する投資機会となった。

 

VII. 最後に

今回ご紹介した内容の詳細をまとめた全 24 ページにわたるレポート「投資環境の中期見通し〜2023 年、市場を動かす 4 つの主要トレンド〜」には、50 年にわたり、高品質なデータ、投信評価情報、分析ツール、及びコメンタリーを通じ、他に類のない専門知識とインサイトを投資信託業界に提供してきた「Refinitiv Lipper のファンド・データ」から生成されたグラフを多数併載しています。リサーチの質を高めるデータ検索や、ポートフォリオの管理など、アセット・マネジメントに携わるすべての方の業務を支えるソリューションとして、ぜひその詳細をご確認ください。

「投資環境の中期見通し〜2023 年、市場を動かす 4 つの主要トレンド〜」

合わせてよく読まれている記事

免責事項:© Refinitiv 2023
本文および本文の内容(以下、「本内容」)は、あくまでも一般的な情報提供を目的としたもので、筆者の本主題に係る過去の経験に基づくものであります。記載された内容はRefinitivの見解を反映するものではありません。なお、無断での複製、転送等を行わないようにお願いします。

本内容は、如何なる法域又は領域においても、投資助言(及びその他の如何なる助言)を提供するものではなく、また金融商品の売買の申し込み又はその勧誘とみなされるべきではありません。記載された意見や予測等は作成時点のものであり、Refinitivは、本内容に含まれる情報の正確性、最新性、適切性及び完全性、また本内容の利用結果について如何なる保証も行わず、本内容に起因して生じた損失や損害について一切責任を負いません。Refinitivは予告なくいつでも本内容を変更、削除する権利を留保します。