2021年1月5日

“乖離”した株価が、企業そして実体経済を変えるか―2021年展望

Refinitiv Japan Blog : 2021 Outlook

リフィニティブ・ジャパン株式会社

代表取締役社長

富田 秀夫

 

東京都の新型コロナ新規感染者数が1337人という大晦日の不安なニュースで年越し。コロナの終息が見通せない中で、2021年の世界は、どのような年になるのか?普通の年でも一年を展望するのが至難の業であることは、ご承知の通り。

その無謀とも言える毎年の試みで、手掛かりとなるのが行事予定。しかし昨年は「予定通り」ですぐ頭に浮かぶのは、米大統領選ぐらいだろう。多くのイベントが中止ないしバーチャル開催に変更となった上に、東京オリンピックまで延期に追い込まれて、予測のための数少ない手掛かりすら失われた。ワクチンへの期待はあるものの。今年も予定が不確実であることは覚悟しなければならない。

そうした状況で注目したいのが、G7(先進7カ国)とG20(主要20カ国・地域)の議長国。今年はG7が米国から英国へ、G20がサウジアラビアからイタリアへと議長のバトンが渡る。もちろん会議自体の開催日程やリアル開催できるかは流動的だが、議題の設定含め、議長国の影響力は小さくない。(トランプ政権の)米国、サウジアラビアと比べて、英国、イタリアで予想される変化は、環境問題の重視だろう。

サステナブル社会への実現への取り組みは、昨年も大きく前進した。しかし今年は、議長国のイニシアチブもあり、予想を超えて取り組みが一気に加速する可能性がある。世界中がコロナ禍に苦しむ中、環境、サステナブルには、誰もが無関心ではいられないし、異論は差し挟めない。取り組みが前進すること自体は好ましいし、必要なことだが、その波及経路やスピードの速さによる過熱化には注意する必要がありそうだ。

昨年の感染拡大初期には世界の株式市場も深刻な影響を受けたものの、短期間で回復し、その後は堅調そのもの。「実体経済と株式市場の乖離(かいり)」が盛んに指摘された。しかし、株式指数の大幅な上昇は、全体ではなく、ビッグテック企業はじめ一部の企業の株価の大幅な上昇にけん引されたこともよく知られている。こうした投資家の評価を集めた企業には、ESG分野の先端企業も多く含まれており、今年予想されるサステナブル社会実現への取り組みの加速化は、そのテーマに沿った企業の株価をさらに押し上げる可能性が高い。高株価を享受する企業は、どう動くのか。環境対策をリードするグリーン企業が、高いバリュエーションを利用して、M&Aに打って出る。他方、ブラウン企業もグリーン部分をスピンオフし強化することで、資金調達を有利に進めるといったことも考えられる。

ロイターでコメンタリーサービスを提供するBreakingviewsは、毎年末に、翌年のトレンドを大胆に予想した一連のコラムをPredictionsのタイトルで配信している。その中で、以下の二つのリンクは、上記の見方に沿った記事だ。

Daimler could be Elon Musk’s Time Warner
Big Oil will cash in on sun and wind

リフィニティブ調査の速報によると、2020年通期の株式資本市場による資金調達は、6100件、1兆1千億ドルとなり、前年から件数ベースで33%、金額ベースで56%増加し、1980年の調査開始以来、金額、件数ともに最高を記録した。新型コロナ感染拡大初期には、運転資金や手元流動性の確保で資金調達に企業が動いたが、年央からは感染の影響の長期化やアフターコロナへの対応を見据えた戦略的な資本増強が中心になったと見られる

そして2021年は、株式市場で高い評価を得ている企業やESG投資家が投資しやすい事業を核として、積極的な企業再編や業界再編が活発化すると予想する!(大阪出身の同僚が好んで用いる「知らんけど」を最後につけたいところではあるが。)「株式市場が実体経済と乖離した」状態から「乖離したように見える株式市場が実体経済を変革するために動く」年になると見立てた。その文脈で、世界的に企業救済等を通じて大株主となり、その動きが継続しそうな「投資家としての国」の役割からも目が離せない。

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