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2022年1月7日
Transitory 対Transition


リフィニティブ・ジャパン株式会社
代表取締役社長
富田 秀夫
FT紙が年末に掲載した2021年を彩った言葉に”Transitory”があった。パウエルFRB議長が「米国のインフレがtransitory である」と発言したのを受けて、物価上昇が一時的な現象かどうかで見方が分かれ、最終的に、この言葉は発表文や会見の表舞台から姿を消した。しかし、transitory論争はインフレに止まらず、現在の状況下で様々な分野で起こりうる。コロナ禍で変化した仕事の仕方、生活の仕方が、transitoryではなく、継続する構造的な変化だと断定するのも早計かもしれない。
その一方で、transitory で終わらせてならないのが、気候変動を始めとする社会的課題の解決だ。気候変動問題への対応はCOP26の開催に向けて取り組みが進んだが、一時のブームで終わらせないために、これから正念場を迎える。効果的な取り組みに欠かせないのが、進捗を測る尺度や評価基準の統一。開示については、IFRS財団による国際サステナビリティ基準審議会(ISSB) の設立で大きな進展が期待できそうだが、評価の統一や、ウォッシュの問題となると、他の要因も絡み、「すぐに解決」とはいきそうもない。
ロイターBreakingviewsは、Predictions2022と題して経済、金融、資本市場を中心に今年の動向を占う様々な視点からのコラムを出稿している。冊子版の副題は、“A world in transition”で、筆者も親しいRob Cox 編集長による巻頭言は”Far from transitory”。奇しくも両メディアの視点は近づく。このよく似た単語transitoryとtransitionの違いがややこしいが、transitoryは「一時的なもの」で、transitionは「ある状態から別の状態への変化の過程」という意味で理解している。
冊子の中で、“Acronymic breakup”と題したコラムが目を引いた。コングロマリット企業の事業売却を引き合いに出しながら、ESGを同じ視点で捉える。ESG評価は、弊社も含めEとSとGの各分野を評価し、それに当該企業で発生したコンプライアンス事案も加味して考慮することで総合的な評点を算出するのが一般的。しかし、このEとSとGを結びつけること自体は自明なものではなく、この用語は利用しないと公言する経営者も海外では出てきているようだ。
事業部門をスピンオフした後の時価総額の合計が、分割前のコングロマリットの時価総額を上回ることは珍しくない。EとSとGに分ける、あるいは別の組み合わせを尺度にした方が、ESGの枠組みよりも、社会的課題の解決が総和として進捗するのであれば、ESGの役割がtransitoryなものになったとしても、transition をためらう必要はないだろう。
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