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2023年1月11日
市場が“個”の違いを再評価する年に

リフィニティブ・ジャパン株式会社
代表取締役社長
富田 秀夫
新春にその年を占うコラムを書くことは、専門家でもない筆者にとって、無謀なことではある。一方、「読み手にとって」を失礼ながら考えなければ、「書き手にとって」は頭の整理に役立つ。前の年に書いた文章を、読み返すには勇気が必要だが、過ぎた年を自分なりに検証する効果的な手段だ。年明けの FT 紙のオピニオン欄に「新年は初心者の気持ちで臨め 」とのコラムがあり、もう一度挑戦することに背中を押された。専門家は、知識と経験があるため、虚心坦懐とはいかないようだ。とは言っても、「10大リスク」的なものと違って、包括的な予測はとても無理なので、今年もポイントを一つに絞る。
毎回「よすが」としているのが、同じく無謀な作業を続けるロイター Breakingviews チームの Predictions。 地政学、インフレ・金利、エネルギー動向と例年以上に予測は困難を極めたせいか、キーメッセージは「何が起こっても大丈夫なように準備せよ」。
拍子抜けしそうになるものの、「レジリエンスを高めよ」と同義とも言える。40 余りの予測が分野別に並ぶが、 Global finance unknowns are more “who” than “what” が気になった。
先行き不透明な今年の金融では、隠れた地雷原アセットを探すより、システミックリスクを引き起こす危険性を持つのが「誰か?」を見ることが重要と指摘する。暗号資産の交換業大手 FTX の破綻は大きなニュースだったが、金融システム全体への深刻な影響は出ていない。
この分析では「何ではなく誰」という視点に、むしろハッとするものがあった。世界的な金融緩和、超低金利が長く続く中で、個が本来持つ違いが、金融市場の評価に十分反映されなくなった印象を持つ。投資信託のパッシブ隆盛もそこから来ていると言えるだろう。新春の投資展望でも、どの企業に投資するかではなく、どのアセットクラスに投資するかが、議論の中心。
誤解を恐れずに言えば、株式ロング・ショート戦略のパフォーマンスが低迷するのも、無理からぬ状況だ。
しかし、今年は潮目が変わる兆候が垣間見える。
まず、コロナ禍や地政学リスクでサプライチェーンの再構築が求められているが、その狙いは効率性からレジリエンスへ移行。そうなるとコスト重視と違い企業間で対応が異なってくる可能性が高い。
次にサステナブル投資では、トランジション含めた企業個別の取り組みに注目することが求められる。エンゲージメントの重要性が叫ばれるのも、その文脈だ。
また、明るいニュースとは言えないが年末には米大手運用会社が、気候変動対策に取り組む運用会社の国際的団体から脱退することを表明した。個が独自の判断で動き始めた事例と言える。
Who という視点からは、経営者の力量にも、自然と焦点が当たるだろう。
同じセクター内でも、個の異なる動きが際立ち、その違いが市場評価により反映されるようになる ―― が2023 年のトレンドと見立てた。しかし、これは決して新しい現象ではない。今回の Predictions の第一章は Back to Basicsだった。
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