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2022年3月24日
アセットマネジメントに隠された「信託」の重み

リフィニティブ・ジャパン株式会社
代表取締役社長
富田 秀夫
永田俊一氏の『(新版)信託のすすめ』を再読してみた。なぜか?
毎年この時期は、パフォーマンスの定量的評価に基づき優秀投資信託を表彰する弊社主催でリッパー・ファンド・アワードを開催する。受賞者には、運用会社がずらりと並ぶが、その名称に投資信託という言葉は見当たらない。「アセットマネジメント」や「投信投資顧問」が主流を占める。運用会社の業容拡大に伴い、社名からは姿を消すか、投信と省略されてしまっているものの、隠れた「信託」は、資産運用業のキーワードであると感じたことが、この本を改めて手に取った理由だ。
投資信託を個人投資家の立場から見れば、投資を運用会社及び信託銀行に委託する訳だが、運用会社には以前「投資信託委託」とう名称を使った会社も目立った。投資を指図するが管理は信託銀行に委託する意味だろう。永田氏のいう信頼の三角形(委託、受託、受益)が、販売会社も含めシンプルな形では成立していないことが、投資信託における信託の存在を見えにくくしている。
運用会社の名称も変遷し、現在は顧客本位の姿勢への取り組みも大きく進展している。運用会社トップは「信じて託して欲しい」と訴えるが、託すものとは何か。「サステナブルで安定的なリターンの実現」と定義しても異論はないだろう。その実現のために運用力の高度化が求められている。
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リフィニティブ・リッパー・ファンド・アワード・ジャパン2022
最優秀ファンド賞および最優秀会社賞はコチラからご確認いただけます。
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金融庁の「資産運用業高度化プログレスレポート2021」では、運用重視の経営体制の構築、リターンの見える化、強みを磨く、業務効率化による経費削減―など、運用パフォーマンス向上のための具体的な処方箋が示されている。しかし、本丸である運用力自体は、運用会社自身が答えを出すべきものだろう。スターファンドマネージャーを擁していることは魅力的だが、会社名を前面に出して販売している以上、会社として高い運用力を継続的に実現できる裏付けが欲しい。「投資はArt」と語るトップもいるが、一面の真実ではあっても、煙に巻かれたような気がするのも事実。永田氏は、信託を受けるには「誠実さ」と「技量」が必須と指摘するが、まさに技量の証が問われる。他社にないリサーチ力、エンゲージメント力、クオンツ力、全体を底上げする教育研修等が想起できよう。
リッパー・ファンド・アワードでは、個別ファンドを対象にしたカテゴリーアワードに加えて、平均パフォーマンスに基づく会社賞があり、アワード授賞記念ウェビナーでは、会社賞を受賞したトップによる座談会を行う。運用力を高める会社としての仕掛けをお聞きするのが楽しみだ。永田氏は、「自己規律、思いやり、誠実履行」の心を持つ一人ひとりを「信託アトム」と名付け、そこから信頼の輪を広げていくことで、今流に言えば「サステナブル社会の実現」を目論む。投資信託を、その構想の中に位置づけることも、「プログレス」への確かな一歩となりそうだ。
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