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2021年8月24日
バリュー・ラリーにより損なわれるサステナブル・プレミアムと興味深い例外
本稿は、2022年8月2日投稿された英文ブログの翻訳です。

Head of Lipper Research – UK and Ireland, Refinitiv
Dewi John
本稿では Refinitiv Lipper のデータを活用し、過去 12 ヶ月間におけるすべての ESG アセットクラスのパフォーマンスと資金の流出入を分析します。
- パフォーマンス : 最も堅調な「グリーン」の株式型 グローバルは、3 年と 5 年の期間では「ブラウン」のアセットクラスをアウトパフォームし、1 年では逆転。 ただし、株式型 グローバル インカムはその逆の様相。
- アセットクラス : マネーマーケットを除くすべての ESG アセットクラスは、2022 年上半期に 166 億ポンドの純流入を記録。
- 分類: 株式型 グローバルは第 1 四半期と比べ流入の伸びが鈍化したものの、108 億ポンドの資金流入となり、再び ESG のトップに。
ESG アセットクラスの概要
各市場のパフォーマンスが軒並み低下したことでセンチメントが悪化し、長期資産の純流出額は今年上半期だけで 499 億ポンドに達しました。そのうち 156 億ポンドが株式ファンドからの流出です。
一方、ESG ファンドの資金流入は現時点で堅調な推移を見せています。ESG 戦略を採用している長期資産の純流入額は 166 億ポンドとなっており、うち 113 億ポンドは、ESG 株式ファンドへと流れています。
図表 1: 2022 年上半期における ESG ファンドと従来型ファンドのアセットクラス別の資金流出入額 (単位 :10 億ポンド)
ESG ファンドのオルタナティブ、債券、不動産の各アセットクラスでは資金が流入している一方で、従来型のファンドではそれぞれ資金が流出しました。マネーマーケット・ファンドでは両クラスともに流出 (それぞれ -153 億ポンドと -185 億ポンド) でしたが、ミックスアセット・ファンドはいずれも流入 (それぞれ 27 億ポンドと 18 億ポンド) となりました。
ミックスアセット・ファンドは、ESG ファンドの資金流入額が非 ESG (従来型) ファンドの流入額を上回っている唯一のアセットクラスとして際立っています。
これは、第 2 四半期と 12 ヶ月の見通し (6 月末まで) についても同様で、すべての長期 ESG アセットクラスが黒字となっており、非 ESG のミックスアセットが、前四半期に一度、マイナス領域 (-4 億 900 万ポンド) に落ち込んだだけです。
図表 2: 2022 年上半期における Refinitiv Lipper グローバル分類による従来型ファンドと比較した ESG ファンドへの最大資金流入額 (単位 : 10 億ポンド)
Lipper のグローバル分類をより細かく見ると、 株式型 グローバルの ESG ファンドが上半期に 108 億ポンドの流入額を計上し、再びアセットクラスのトップとなりました。 しかし、第 2 四半期は資金流入が鈍化しており、第 1 四半期は 76 億ポンドの流入であったのに対し、第 2 四半期は 32 億ポンドの流入にとどまっています。
株式型 グローバルの非 ESG ファンドは、両四半期ともにほぼ同じ額 (約 35 億ポンド) の資金流出となっています。
しかし、株式型 グローバル インカムでは、9 億 3,300 万ポンドの資金流入 (非 ESG ファンドは 7 億 2,300 万ポンドの資金流入) を記録したことから、投資家はグローバル株式の組み入れ比率を高めていることがわかります。 詳細は後述の「パフォーマンス」で見ていくとして、グローバル株式の比率を高めた投資家たちにとってはかなり良い選択肢となったことが想像できます。
債券型 グローバル 米ドル建て社債では 8 億 1,200 万ポンドの資金が ESG ファンドに流入しており、非 ESG ファンドでもわずかに下回る資金流入額となっています。 このような環境下では、ドル建ての資産は、安全資産としての地位と高い利回りが期待できることから、魅力的な資産として捉えられているようです。
中央銀行が連邦準備制度理事会 (FRB) よりも先に動いたと見られる現地通貨建ての新興市場債は、FRB の利上げに弱いハードカレンシー建ての新興市場債とは対照的に魅力的であることが証明されています (ESG ファンドが 5 億 4,400 万ポンド、非 ESG ファンドが 2 億 7,600 万ポンドの流入額)。半年間でのファンドの流出額は、ESG が 5,900 万ポンド、非 ESG が 1 億 4,200 万ポンドとなっています。
債券型 グローバル インフレ連動型では、ESG ファンドに 5 億 700 万ポンドの資金流入がありました (非 ESG ファンドは 9,800 万ポンドの資金流出)。 また債券型 英ポンド建て (短期) では ESG ファンドに 4 億 300 万ポンドの資金が流入しましたが、非 ESG ファンドでは 28 億ポンドの資金が流出しました。
これは、第 1 四半期において、ESG ファンドへの組み入れと非 ESG ファンドからの資金流出の両方の比率が増加したことを意味しており、英ポンド建て短期債ではそれぞれ 3,100 万ポンドの組み入れと 7 億 9,900 万ポンドの資金流出でした。
ミックスアセット 英ポンド建て バランス型とミックスアセット 英ポンド建て アグレッシブ型の ESG ファンドは、それぞれ 13 億ポンドと 11 億ポンドの資金流入となっており、非 ESG ファンドについても資金が流入しています。
他の記事でもお伝えしたとおり(英語)、現在は、個人投資家が新型コロナウイルスの影響で浮いた資金を投入している状況のように見え、社会生活の正常化に伴い、景気の悪化が予想されることから、今後、足踏み状態に陥る可能性も否定できません。
Lipper: 独立系ファンドのパフォーマンス・データ分析におけるグローバル・リーダー(英語)
ESG プレミアムのアノマリー
図表 3 : 2022 年上半期の最も堅調なセクターに対する ESG ファンドと従来型ファンドのパフォーマンス比較 (増加率)
図表 3 では、2022 年上半期において最も堅調な 3 つのセクターを取り上げ、これらのセクターに対する ESG ファンドと非 ESG ファンドのパフォーマンスをそれぞれ 1 年、3 年、5 年の期間で比較しています。
株式型 グローバルは、この期間における最も堅調なセクターとして取り上げています。 2 位のミックスアセット 英ポンド建て バランス型は、ミックスアセット 英ポンド建て アグレッシブ型が同じパターンを示すものの振れ幅が大きいため割愛し、代わりに株式型 グローバルと対照的で示唆に富む、株式型 グローバル インカムを取り上げました。
2020 年秋に市場が回復して以降、パフォーマンス・プレミアムが低下しているにもかかわらず、ESG ファンドの資金流入は堅調に推移しています。
最も堅調な株式型 グローバルがその最たる例で、ESG ファンドは、3 年、5 年後では 、非 ESG ファンドをアウトパフォームしているものの、1 年で逆転しており、長期的にはリターンの差を縮小しています。
しかし、これは普遍的な現象とは言えません。 株式型 グローバル インカムでは、3 年、5 年では非 ESG ファンドが ESG ファンドをアウトパフォームしていますが、1 年では遅れており、状況は逆転しています。
株式型 グローバルと株式型 グローバル インカムの対比は、成長型グローバルがバリュー型インカムに 12 ヶ月で追い越されるという、単なるスタイルの変化以上の何かが起きていることを示しており、示唆に富むものです。
このことは、12 ヶ月間の株式型 グローバルに対する株式型 グローバル インカムのアウトパフォームを説明するのに十分であり、この期間の株式型 グローバルにおける ESG ファンドに対する非 ESG ファンドのアウトパフォームも説明できるかもしれません。しかしながら、ESG ファンドの 株式型 グローバル インカムが 株式型 グローバルに対してアウトパフォームしていることを説明することはできません。
この要因を突き止めるには、ポートフォリオ・レベルでもう少し掘り下げる必要がありますが、これについては別の機会に改めてご紹介します。
注)本稿は、2022年8月2日投稿された英文ブログの翻訳です。内容に相違がある場合にはリフィニティブのグローバルサイトに掲載されている原文が優先します。
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