2024 年 1 月 9 日

1.5℃ シナリオ実現のためにアセット・マネージャーができること

持続可能な社会へ向けたサステナブル投資戦略とは

温室効果ガス排出企業の退場だけでは十分と言えない裏事情。

リフィニティブ編集チーム

I. SUMMERY

  • グラスゴー合意の実現に必要な約 100 兆米ドル: 21 年の COP26 で採択された「1.5℃ 目標」の実現には、2050 年までに約 100 兆米ドルが必要
  • 温室効果ガス高排出企業の退場だけでは済まされない: 現実世界を変えるには、気候変動への解決策を開発している企業に積極的に投資すべき
  • 0.5℃ で変わるポートフォリオ配分の考え方:  気温上昇が 2℃ になる可能性を考慮へいれると、脱炭素化銘柄より気候変動対策銘柄への投資が重要

世界的な温暖化対策が迫られる中、アセット・マネージャーは投資対象の変更を余儀なくされています。2021 年の COP 26 で採択された「1.5℃ 目標」を実現するには、膨大な資金が必要です。加速する温暖化を食い止めるために、アセット・マネージャーが取るべき戦略とは。

LSEGのサステナブル投資グループ リーダーによる見解を見てみましょう。

 

II. グラスゴー合意の実現に必要な約 100 兆米ドル

2021 年の COP26 で採択された「グラスゴー合意」には、2100 年の世界平均気温の上昇を産業革命前に比べて 1.5℃ 以内に抑える「1.5℃ 目標」が盛り込まれました。その実現へ向けて動き出したものの、必要資金の膨大さが浮き彫りになってきています。一説によると、「1.5℃ 目標」実現のためには、2050 年までに約 100 兆米ドルの資金と、抜本的な技術革新が必要だともされています。

たしかに、中国の鉄鋼業からアメリカの自動車業界、オーストラリアの鉱山、インドの工場に至るまで、CO2 の抜本的な削減を叶える製造プロセスの転換はまだほとんど始まっていません。

このままでは、温暖化に伴う熱波、暴風雨、山火事などの影響を制御できないまま、3℃ 上昇シナリオもありうるとされています。最新のIPCC (気候変動に関する政府間パネル) の報告によれば、2030 年における世界の温室効果ガス排出量を予測すると、温暖化が 2℃ になってしまう可能性を示唆しているそうです。

 

III. 温室効果ガス高排出企業の退場だけでは済まされない

日々サステナブル・ファイナンスに取り組むアセット・マネージャーからすると、「ならば、ポートフォリオから温室効果ガスの高排出企業を排除すればいい」と考えるかもしれません。その方法でも、数字上では投資ポートフォリオの温室効果ガス排出量を削減することができるでしょう。しかし、それでは現実世界は変わりません。

過酷な干ばつ、想像を絶する豪雨に森林火災、サンゴの消滅、魚類の減少など、私たちの生存を本格的に脅かす事態を、手をこまねいて眺めているだけになってしまいます。

気候変動に関する機関投資家グループの投資実践プログラム・ディレクター マヘシュ・ロイ氏は「本質的な問題は戦略的な資産配分にあると言える。投資家が現実世界の温室効果ガス排出量を減らす最短の近道は、気候変動に対する解決策へ投資することだ。必要なのは、実体経済の脱炭素化を推し進める解決策。アセット・マネージャーは、その点を考慮へ入れて投資すべきだ」と、2023 年の Climate Investment Summit で表明しました。

すなわち、サステナブル・ファイナンスに関わるアセット・マネージャーができるのは、気候変動の解決策を開発している企業に積極的に投資することだと言えます。

 

IV. 0.5℃ で変わるポートフォリオ配分の考え方

一見するとわずか 0.5℃ の気温差が、投資活動に大きく影響するのはなぜなのでしょうか。それは、先ほども述べた通り、その小さな「0.5℃」が大げさではなく、人類の生存を大きく左右するからです。

1.5℃ 上昇なら作物の収穫量の減少は3%に食い止められますが、2℃ の場合は 7% に及んでしまう。1.5℃ なら移住を余儀なくされるのは、人口の 17% にとどまりますが、2℃ の場合は 37% に及んでしまう。

BNY メロン・インベストメント・マネジメントのグローバル・サステナブル・ソリューション責任者 クリスティーナ・チャーチ氏は、「1.5℃ シナリオと、2℃ シナリオでは投資ポートフォリオにおける脱炭素化と気候変動の緩和に対する投資配分が大きく変わる。2℃ シナリオを見据えるなら、より気候変動対策へ焦点を当てざるをえない」と述べています。

また、チャーチ氏は、「ポートフォリオ・マネージャーは政府関係者と協力して、社会構造そのものの変革にアプローチし、1.5℃ 目標の達成を実現する政策支援を推進すべきだ」と力説しています。

気候変動が実体経済に影響を与え始めている中、投資家は最適なポートフォリオを組むことで、コミットメントを宣言するのみならず、実際の行動に移さねばならなくなっています。たしかに地球温暖化は加速していますが、裏を返せば、それは投資可能な気候変動対策企業が増えているということでもあります。

ポートフォリオ・マネージャーは、これから急速に浮かび上がってくるリスクと機会を理解し、政府が立案する温暖化対策にまつわる規制を奨励することが重要です。

 

SUSTAINABILITY STRATEGY

Asset Management’s multi-trillion-dollar 1.5°C challenge

LSEG の提供するサステナブル・ファイナンスに関する詳細なレポートは、こちらのページをご覧ください。

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