2021年6月22日

サステナビリティに関する目標の期限が近づくドイツでは何が起こっているのか

本稿は、2021年4月23日投稿された英文ブログの翻訳です。

Rod Morrison

Editor of Project Finance International

Refinitiv

Rod Morrison

ドイツは、サステナビリティに関する目標達成に向けて取り組む中で電気料金の高騰に直面しています。エネルギー転換に乗り出す国々はドイツの経験から何を学べるでしょうか。

1、この数年間でサステナビリティに関する目標を導入する動きは拡大しており、今や多くの政府および企業が 2030 年を見据えた計画を発表しています。2030 年は現実的に考えられるほど近くではあるものの、痛みを感じるにはほど遠い未来です。

2、 しかし、経済大国ドイツでは、サステナビリティに関する目標の期限が 2022 年と目前に迫っており、その経験から多くを学ぶことができます。

3、再生可能エネルギーへの転換に乗り出す他の国々は、ドイツの経験を教訓にして適切な計画を立てる必要があります。
 

本稿は、2021 年 4 月 8 日、PFI に掲載されたものです。 
ドイツ政府は 2010 年、Energiewende (エネルギー転換政策 : 英語) を正式に開始し、2011 年の福島原発事故を受けて原子力発電所を 2022 年までに段階的に閉鎖することを決定しました。
再生可能エネルギーを大幅に増加しながら同時に脱原発を目指すというのは、かなり野心的な目標と言えます。原子力発電所の段階的閉鎖の目標は達成しつつありますが、電力供給を保つために石炭やガスの火力発電所は稼働し続けています。

イチかゼロの世界でも、選択や譲歩を避けて通ることはできません。

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サステナビリティに関する目標とエネルギー転換
ドイツ連邦会計検査院 (FAO) が先週公表した「安価で安定的な電力供給からみたエネルギー転換政策」と題するエネルギー転換に関するレポートは興味深い内容になっています。

レポートは総じて、転換プロセスを担うドイツ連邦経済エネルギー省 (BMWi) に対して批判的です。しかしもっとも驚くべきは、その最終的な結論でしょう。

「BMWi は、国民にとって割安で効率的な電力供給とは何かを見極める必要がある。各指標の基準を電気料金が割安とみなされる水準に設定し、国の規制下にあるエネルギー価格決定システムの抜本的改革に乗り出すべきだ。さもなければ、ドイツの競争力は危険にさらされ、エネルギー転換政策への支持を失うだろう」

と述べており、手厳しい内容となっています。しかし確かに、費用を負担することになるのは国民です。

再生可能エネルギーの高い代償
FAO のレポートは、国民負担についての詳細と、エネルギー転換政策への支持が失われる可能性があるという結論に至った理由を詳しく説明しています。「現時点で、一般的な家庭の電気料金がドイツほど高い国は EU 加盟国には見当たらない。ドイツの料金は EU 平均を 43% 上回っている。さらに、年間の電力消費量が 20~20,000Mwh の法人・産業需要家の電気料金も最も高い」

「一方、年間消費量が 150,000MWh を超える大口需要家の電気料金は EU 平均を下回っている。電力料金高騰の原因となっているのが、国の規制下にあるエネルギー価格の構成要素、とりわけ再生可能エネルギー賦課金である」ドイツはいち早くエネルギー転換に乗り出しており、先駆者としてドイツが経験したさまざまな初期の問題を他の国々はたたき台にすることができます。

さらに再生可能エネルギーのコストがこの 10 年間で劇的に減少していることから、今後、再生可能エネルギー補助金がそれほど高額になることはないと考えられます。とは言っても、英国などの市場では 2020/21 年の再生可能エネルギー補助金が 100 億ポンドに達しており、他のエネルギー政策関連の料金を含めると電気料金の 30% を占めています。

需要家への再生可能エネルギーの供給
エネルギー転換に関する費用の見通しには明るい面もあり、再生可能エネルギーの発電コストは急速に減少しています。しかし、その一方で厳しい側面として、新たな電力を需要家に供給するには世界中で市場の需給調整メカニズムや貯蔵の問題を解決し、エネルギー転換のための巨額の投資を実現する必要があります。

そのうえ、運輸部門などエネルギー転換の他の分野でも多額の新規投資が必要です。運輸部門は、先駆者であるドイツですら 2030 年までの野心的な目標でまだ手を着けられていません。電気自動車 (EV) 分野では数々の取り組みが進められていますが、コスト面だけでなく数多くの難しい問題を抱えています。

増え続けるエネルギー転換への公的支援を背景に、再生可能エネルギー資産への需要は拡大しています。しかし、再生可能エネルギー開発事業者ですら公的支援を当然と考えることのリスクを認識しています。

最近行われたイングランドとウェールズの洋上風力発電用の海域リース権オークションでの落札価格の高騰は警鐘を鳴らすものでした。建設開始前の段階で費用は毎年 8 億 8000 万ポンドに上るとみられています。

再生可能エネルギー・プロジェクトの費用は誰が負担するのか
「誰かが費用を負担することになるのです。おそらくは、少なくとも部分的には需要家が負担することになるでしょう」と、 Orsted の英国責任者 Duncan Clark 氏はロイターの取材に答えています。この発言から分かるように、Orsted はリース権を取得しておらず、費用を負担していません。しかし、BNP パリバの主任サステナビリティ・ストラテジストの Mark Lewis 氏は現在の建設費用から算出すると、オプション料金がプロジェクト開発費用を約 35% 押し上げるとしています。スコットランドのリース権オークションはそれほど巨額にはならないはずですが、それでも調達金額は計 8 億 8000 万ポンドとなる見込みです。

FAO のレポートは、サステナビリティに関する野心的な目標策定に取り組むだけでなく、現実的な対処方法を模索しているのであれば一読の価値があります。

「法律 (エネルギー事業法) の目的は、最も安全かつ安価な形、かつ利用者を重視した効率的で環境に優しい形で国民への電力およびガスの供給を実現することであり、再生可能エネルギーへの依存度はますます高まっている」とありますが、それは間違いありません。

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注)本稿は、2021年4月23日投稿された英文ブログの翻訳です。内容に相違がある場合にはリフィニティブのグローバルサイトに掲載されている原文が優先します。

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