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2021年7月15日

ESG投資のメリットとデメリットとは?わかりやすく解説

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リフィニティブ編集チーム

ESG投資のメリットとデメリットとは?投資先を選別する際に、気候変動対策や環境保全などを示すE(Environment:環境)の要素、ダイバーシティの達成や誠実な労使関係の実現、人権問題への対応といったS(Social:社会)の要素、組織の健全性や透明性、公平性などを示すG (Governance:ガバナンス)の要素を考慮する「ESG投資」。

中長期的に社会にプラスのインパクトをもたらすとして、世界的にESG投資が主流になりつつある一方、「金銭的なリターンを得るだけならば従来型の投資手法でもいいのではないか」との指摘も根強くあるようです。

では、ESG投資にはどのようなメリットがあるのか? そして、デメリットにはどのようなものが考えられるのか、整理していきましょう。

I. ESG投資のメリットとは?

ESG投資は、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する要素を踏まえて投資先の選別を行なうため、企業が抱える次のようなリスクを踏まえ、投資対象からの除外や投資ポートフォリオの組み替えなどの判断がしやすいと考えられています。

 

1. ESG投資のメリットとは? E (環境)-自然災害や環境リスクを考慮した投資対象の選別が可能になる

気候変動や自然環境等の変化は企業活動にとっても無関係ではありません。そのような事柄を「リスク」として捉え、そのリスクをどうマネジメントして解消していくのか、市場や生活者などのステークホルダーに対して納得のいく説明をしている企業を選別することは、中長期的に存続できる企業を選ぶことになり、継続的なリターンや持続可能な環境を保つことにもつながると考えられます。

 

2. ESG投資のメリットとは? S (社会)-児童労働や労働搾取などの人権侵害を行なわない企業に投資できる可能性が高くなる

児童労働や労働搾取といった人権侵害はここ数年で非常に注目されており、その事実が明るみになれば企業は甚大なレピュテーション・リスクを背負い込むことになります。

企業が人権問題に関して高い感度で臨む必要がある理由として特筆すべき点は、ミレニアル世代やZ世代のような世界的に経済の牽引役になりつつあるステークホルダーたちの関心度が高いためだと言えます。このことは、過去にアパレル業界や電子機器メーカーのサプライチェーン上で劣悪な労働環境が問題になった際には、不買運動が起こり、企業は売り上げ減少だけでなく中長期的なブランド毀損を抱え込んだことからも明らかです。

もちろん、このような波及的なリスクだけではありません。近年は、米国の貿易円滑化・貿易執行法や英国現代奴隷法、豪州現代奴隷法、オランダ児童労働デューデリジェンス法など、人権保護の考えを下敷きにした貿易関連の法令が活発に運用されつつあります。例えば、中国・新疆ウイグル自治区の強制労働や人権侵害の問題は、上述の法令適用も含め、大きな国際問題になっており、当該地域と直接あるいは間接的に繋がりがある企業の経済活動にも影響が出始めているほどです。

また、米国腐敗行為防止法(FCPA)や英国の贈収賄禁止法をはじめとする各国の不正競争防止に関する法令は罰金が高額化し続けています。つまり、この問題は財務リスクに直接影響することがありうる、というわけです。

逆に、このようなリスクを正しく管理し、解消に向けて取り組み達成しようと努力する企業を選ぶことは、上述のリスク回避になり得ます。

 

3. ESG投資のメリットとは? G (ガバナンス)-合理的な経営と自浄能力を有すると考えられる企業を選ぶことができる

不正や不祥事の隠蔽、カルテル・談合などの不当競争の事実が明るみになれば当然ながら市場からの信頼を失うことになります。そうした事柄が明るみになることで被る損害や損失を考えれば、法的な拘束力の有無に限らず、「正しいビジネス」を推進することは最終的には合理的なことだと言えるでしょう。

そのような経営を実現するために、企業は透明性と信頼性を高めるべく、取締役の構成を多様化させて多角的な視点で経営をチェックし、相互に問題を素早く知覚できるような環境をつくるなどの取り組みが必要なはずです。

また、これが実現できている企業ほど、自浄作用が働き、万が一問題が発覚した場合でも適切な対応が可能になると期待できます。そうした意味で、ガバナンスの要素に注目することは、中長期的に企業価値が高い企業を見極めて投資する可能性を広げると考えられます。

 

4. ESG投資のメリットとは? 社会的リターンを見込むことができる

ESG要素への取り組みに熱心に対応している企業に投資することは、その取り組みが正しく持続可能な社会に貢献しているのであれば、投資家の立場で社会的な責任を果たすことにつながります。それは、例えば、ガバナンス面での評価によって採用活動が優位に働く、などのプラスの利益を生み出す場合も考えられます。

過去、「ESG要素への対応は努力義務の部分が多く、対応する価値が見出しづらい」との意見もありましたが、今日では企業の財務リスクどころか、人材確保へのリスクにまで及びはじめています。

また、これは上場企業のような大企業だけの問題ではなく、より広い範囲に影響し始めています。2020年1月、米国のゴールドマン・サックスはIPO引受業務で、上場を希望する欧米企業に取締役候補の多様性を保つよう求める指針を打ち出したことは記憶に新しいでしょう。「最低1人の女性取締役の選任を求める」というフレーズを記憶しておられる方も多いはずです。

このようなことから、ESGに取り組むことは、企業にとって多角的なメリットになり、そうした企業を選ぶESG投資を実践することは投資家のメリットにもなると考えられます。

 

II. ESG投資のデメリットとは?

ESG投資は長期的なリターンを得る可能性を見出すものであるため、短期的な利益を得ることには基本的には適さないと言われています。また、「ESGに熱心に対応していること」が投資の“決め手”になっているとするならば、その期待に反する振る舞いがあった場合に市場をはじめステークホルダーから反発を受けることは必定です。

 

1. ESG投資のデメリットとは? ESG投資のデメリットとは?開示情報と実態が乖離していた場合の反発

もし、企業によるESGの開示情報の内容とその実態が乖離していたことが明るみになった場合、たとえそれが法的に問われるものではなかったとしても、市場をはじめとするステークホルダーに不信感を与えることになると想像できます。また、それが元になり、企業価値の低下や株価の下落が起こるおそれは十分に考えられます。

そうした意味では、「SDGsウォッシング」や「グリーンウォッシング」「ブルーウォッシング」といった上部だけを取り繕ってサステナビリティへの取り組みを企業のPRに“活用”する企業かどうかを見極められなかった場合、投資家は想定外のリスクを負うことになると考えられます。

 

2. ESG投資のデメリットとは? ESG要素によってのリターンなのか、分かりづらい

ここ数年、ESG投資は「“ブーム”になっている」と言えるほどの浸透を見せています。これは持続可能な社会を創出する上で喜ばしいことですが、投資行為である以上、リターンを得ることを諦めるわけにはいきません。

確かに、ESG投資は最終的に社会にポジティブなインパクトを与えるという社会的リターンを期待できますが、「本当にESGに注力している企業だからそのリターンが得られたのかどうか?」を検証する方法はまだ十分とは言えないでしょう。

しかし、この点については、テクノロジーによって可視化される部分があるとの見通しもできるでしょう。とはいえ、そのために別途投資が必要になるとも考えられるため、短期的には“何も対策をしていない企業”の方が高い業績をあげるケースも考えられるかもしれません。

 

3. ESG投資のデメリットとは? ESG投資のコストをどう捉えるか?

ESG投資を行なうことで、ガバナンスの欠如やサプライチェーン・マネジメントの不備によるリスクを低減させたり、優良の銘柄選択に優位に働く可能性はあります。しかし、それをするためには、企業自らが公表するESGの開示情報だけでは公平性や透明性が担保されないおそれもあります。

投資手法によって異なりますが、ESGの開示情報を元に企業との対話を深めて参考にする場合や、第三者となる評価機関が公開しているESGスコアを利用して高い透明性のもとで投資先の選別をする場合、そのために不可欠な情報を調達・収集・分析する人的・金銭的・時間的コストが発生するでしょう。これらは従来の投資手法ではかからなかったコストだと言えます。

 

III.まとめ

ここまで、ESG投資の性格上考えられるメリットとデメリットを整理してきました。デメリットとして挙げていた「リターンの明確化」については、近年、メジャネット(計測)のテクニックが上がってきたことで、解決の糸口が見えてくるなど、明るい材料が出てきています。この背景にも、DXによるサプライチェーン・マネジメントの質の向上等、これまで「技術的に不可能だった事柄」を解決できる環境が整ってきたことが指摘できるでしょう。

こうした社会の変化によって、投資家はこれまで把握しづらかった金銭的・社会的リターンを把握しやすくなり、企業のESGへの取り組みの努力がより公平に評価できるようになると考えられます。そのため、取り組みが疎かになっている企業にとっては、早晩、考えを改める必要性に迫られるとも見通されます。

Refinitivは、ESGの3つの柱にまたがる10の主要テーマ(排出量、環境製品の革新性、多様性と受容性、人権、株主など)について、企業の相対的なESGパフォーマンス、コミットメント、効果を透過的かつ客観的に算出するように設計されたESGスコアの提供などを通し、持続可能な社会づくりに貢献しようとする企業の成長機会と顧客本位の業務運営を徹底する金融機関を支え、世界の金融コミュニティに貢献してまいります。

 

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