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2021年11月2日

マネーロンダリング(資金洗浄)とは?仕組みを分かりやすく3つのポイントで解説

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リフィニティブ編集チーム

マネーリンダリング(マネロン、資金洗浄)に巻き込まれることは、金融機関をはじめあらゆる企業にとって、事業継続性や信頼性に悪影響を及ぼすだけでなく、風評被害ほか様々なリスクの上昇を意味します。今日では、マネーロンダリングの危険性がある「疑わしい取引」が高度化・複雑化しており、リスク発生の度合いは高まっているとも考えられています。

では、どのように対策を打てばいいのでしょうか? 道筋を明らかにするためにも、まずはマネーロンダリング(マネロン、資金洗浄)とはどのようなものなのか、仕組みを確認することから始めましょう。
 

I.  マネーロンダリングとは?

マネロン、資金洗浄とも言われる行為のこと。マネーロンダリングに対抗することをアンチマネーロンダリング(AML)と言い、これを徹底することは金融犯罪を防ぐだけでなく、事業の安定的な継続、ひいては社会秩序全体を守ることにも繋がると考えられています。

 

1.  金融庁が示すマネーロンダリングとは?

金融庁はマネーロンダリングについて、同庁ウェブサイトにて次のように定義しています。

「マネー・ローンダリングとは、違法な起源を偽装する目的で犯罪収益を仮装・隠匿することであり、例えば、麻薬譲渡人が取得した譲渡代金をあたかも正当な商品を譲渡した代金であるかのように装うため売買契約書を作成する行為、あるいは借入金、預り金等を装ってその旨の書類を作成し、あたかも正当な取引により得た資金であるかのように偽装する行為がその典型とされています」(出典:金融庁「マネーロンダリング対策」)

特に金融機関はマネロンに巻き込まれるリスクが高いとされており、徹底した対策が求められています。

例えば、金融庁が2021年5月31日に示した「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備の期限設定について」では、「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」の2回目の改正を周知した上で、加盟金融機関に対し、「2024年3月までにガイドラインで対応を求めている事項に対して適切かつ迅速に必要な対応を講じるよう」求め、検査やモニタリングを通じて実施状況を確認していくほか、仮にマネロン・テロ資金供与対策に問題があると認められた場合には法令に基づく対応を行なう旨を強調しています。

これほどまで厳格なマネーロンダリング対策を推進する理由は、マネロンについて、数年来あらゆる国際機関が一丸となって対応を進めているからに他なりません。

特に日本の場合、各国のマネロン対策の進捗度合いを審査する国際組織「金融活動作業部会 (FATF)」による第4次対日審査の結果が「ほとんど不合格に近い判定」だったこともあり、対策の強化が徹底されようとしていると考えられます。

一方、テロ組織や暴力団などの反社会的勢力は、マネロンの方法を複雑化させたり、フロント企業やダミー企業などを“駆使”するなどして発覚を逃れようと躍起になっており、イタチごっこの状態が続いているのも事実です。

複雑化の例として挙げられるのは、前述に挙がっている麻薬のみならず、土地や有価証券、貴金属類のほか、精巧な模造品や模倣品を用いて資金洗浄を行なうケースも増えているということです。模造品や模倣品については、企業や一般生活者が「本物だ」と誤認して購入してしまい、意図せずマネロンに関わってしまうことも現実に起きています。

そうしたこともあり、警察庁刑事局組織犯罪対策部の犯罪収益移転防止対策室 (JAFIC) は、疑わしい取引の届出をするよう事業者に促しています。

 

2. マネーロンダリングに対する国際的な姿勢

上記でも触れた通り、IMF (国際通貨基金) をはじめ、あらゆる国際機関は一丸となって「断固たるマネーロンダリング対策 (AML) とテロ資金供与対策 (CFT) で、金融業界の規律と安定性を高める」と強い意志を打ち出しています。また、それを受け、世界各国で反社会的勢力の違法資金を取り締まるための法規制が厳格化されています。

特に、アンチ・マネーロンダリングを実践するための国際機関であるFATFは、定期的に加盟各国の取り組み状況について、「マネーロンダリングが行われやすい状態に陥っていないか」といった視点で審査を行ない、その審査結果を発表しています。これにより、各国当局はもちろんその監督下にある金融機関等がマネロン対策に真剣に取り組み続けるようになります。

 

3. マネーロンダリングに対する日本の姿勢

日本でもテロ組織や暴力団によるマネーロンダリングに徹底的に対抗するため、「犯罪収益移転防止法 (犯収法) 」が改正されました。一方、先に触れた通り、FATF (金融活動作業部会) による第4次対日相互審査報告書によると、いわゆるメガバンクのマネロン対策は評価できるものの、地銀や信用組合・信用金庫のほか、新たに参入してきたスマホ決済業者などの対応は不十分で、「日本はいまだマネーロンダリングができる余地がある国である」との厳しい評価を受けています。

今後も適切な規制の網をかけることで疑わしい取引をなくすだけでなく、あらゆる企業や団体が「リスクベースのアプローチ (リスクベースアプローチ) 」で「マネロンが起こるおそれがあるのはどこか?それに対してどう対策を講じて実践するべきか?」ということを検討し、反社会的勢力に活動資金が流れないよう取り組まなければなりません。

 

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World-Check は、信頼性と精度に優れたリスク・インテリジェンスの情報ソースです。企業活 動にこのインテリジェンスをご活用いただくことは、規制を遵守し、十分な情報に基づく判断 が下せる一助になるだけでなく、犯罪や不正なビジネス慣行による利益のマネーロンダリング に意図せず利用されることを防ぐ手助けにもなります。

II マネーロンダリングの仕組み

マネーロンダリングの仕組みは非常に複雑です。以前よりマネロンを防止するための役割を果たしてきた金融機関は、マネロンの「疑わしい取引」の例として、次のような手法に警戒しています。

 

1. 通常と異なる口座の動き

多くの事業者にとって、総合振込先や給与振込先を頻繁に変更するケースは少ないと考えられます。それにも関わらず、異なる複数の相手に送金の申込みがある場合や事業内容には関係のないと考えられる海外への送金がある場合、また、最近はインターネット口座が“乗っ取られているおそれがある”と検知された場合も、「疑わしい取引」として警戒を強める必要があると考えられています。

 

2. 現金による資産の取得、または不透明な事業構造

非対面や現金での取引は資金の出所が把握できないため、「マネーロンダリングがしやすい」とされ、警戒されています。そのため、ATMからの引き出し可能な金額が制限されるなど、対策が取られています。

一方、実態が把握しづらい事業構造の企業や実質的支配者 (UBO) が特定できない企業による口座開設ができないよう、KYC (Know Your Customer、顧客の本人確認) の徹底をすることで「疑わしい取引」を防ぐ対策も取られています。

 

3. 不正な値付けがされた商品の売買取引

例えば、反社会的勢力が、ほとんど価値がないものに高額な値付けをし、あたかも価値があるものであるように偽装して売買取引を成立させた場合、その売上金は“合法的な取引による収益”と見せかけることができます。

多くの企業にとって、購買する商品の現物を全て事前に確認することは現実的ではなく、不正な値付けがされた商品が正規の商品に紛れ込んでいたとしても気づきづらいと考えられます。また、規模が大きい調達の場合、取引先は複数になるケースもあるでしょう。そうした取引先のリストが通常とは異なったり、合理的ではない増え方をしたりしている場合、「疑わしい取引」として警戒する必要があるとされます。

 

4. AML への規制や取締りが不十分な国やその国の外国PEP/PEPおよびその関係者との取引

各国のFATF審査結果は全世界の公開されており、マネロンが行なわれていると疑われる国や地域の情報は共有されています。そのため、該当する国との取引は「疑わしい取引」であるリスクが高いと判別することができます。また、該当する国と繋がりがある人物やその関係者が取引に関わる場合も、リスク度合いが高いと判断できるとされています。

 

5. TBML (トレードベースマネーロンダリング)

「2-3 不正な値付けがされた商品の売買取引」で紹介した通り、物流の過程ではモノを介したマネーロンダリングが起こりやすいとされています。このうち貿易によってマネロンがなされることを「TBML(トレードベースマネーロンダリング)」と呼んでいます。サプライチェーンが世界規模になり、複雑化・重層化している今日、物流は新たなマネロンの“舞台”になりつつあり、テクノロジーによるトレーサビリティの担保が欠かせないとの議論が活発化しています。

参考:金融庁「疑わしい取引の参考事例」
なぜAML (アンチ・マネーロンダリング) が世界秩序の維持に貢献するのか?

 

III. まとめ

マネーロンダリングを阻止するためにまず取り組むべきことは、「マネロンとはどういうもので、自社においてどういった場面で発生するリスクがあるか?」を洗い出し、そのリスクを周知徹底し、取引の現場を担う人材が「疑わしい取引」を水際で検知できるようにすることです。

同時に、金融機関はもちろんあらゆる事業会社で、KYCのためのデューデリジェンスやスクリーニングの実施が求められています。特に、昨今はM&Aなどによって「取引先が実質的に別企業になっていた」ということが珍しくなくなっているため、実質的な支配者(UBO)が誰なのか、それが反社会的勢力と繋がる存在ではないか? といった確認を定期的に繰り返すことも必須だと言えます。

こうした取り組みを行なう上で不可欠なのが、取引先の信頼性や信用度を正確に確認・把握することです。Refinitivは、マネー・ロンダリング対策 (AML対応) に資する8つのソリューションを展開し、企業が安心してビジネスに集中できる環境を整えられるようサポートしています。

 

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