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2021年4月28日
反社チェックの目的、5つのポイントと実例で分かりやすく解説


新しい取引先や顧客とビジネスを始める際、きちんと相手を見極めていますか?しっかりとした調査をしないままビジネスを始めると、場合によっては表面上分からない大きなリスクを抱え込むことにもなりかねません。ここでは、そんなリスクを排除するための作業である反社チェックについて詳しく解説していきます。
目次
1. 反社チェックを実施する目的とは?
2. 反社チェックとは?
3. 反社チェック、すべての企業で必要?
4. 反社チェック、大企業と中小企業で方法は違う?
5. 反社チェック、実施すべきタイミングとは?
1. 反社チェック対策は十分ですか?気にすべき業界と業種とは?
2. 反社チェック、過去の実例を開設


I. 反社チェックの目的、5つのポイント
反社チェックとは、対象が反社会的勢力(反社勢力)かどうかを確認する作業を意味します。また、企業が取引するサプライヤーまたは顧客のバックグラウンドをチェックすることも反社チェックと表現されます。今回は反社チェックを実施する目的や、企業の対策について、分かりやすく5つのポイントで解説します。
1. 反社チェックを実施する目的とは?
あらゆる犯罪に巻き込まれることがないよう細心の注意を払い、安定的な企業経営を続けられるように万難を排することは、企業価値の維持に繋がる重要な事柄です。だからこそ、コンプライアンス部門の業務、とりわけ「反社チェック」は、企業にとって極めて重要な取り組みのひとつだと言えます。
2. 反社チェックとは?
日本企業において「反社チェック」と言えば、もっぱら暴力団等の反社勢力やそうした組織との繋がりがないかを見極めることを指してきました。しかし、今日では、海外展開の活発化や海外での売り上げ比率の増加など、ビジネスの実態が変化したことによって、海外企業との取引やブローカーとの契約などの機会が増えるケースが多くなっています。そのため、反社チェックの範囲はこれまでに比べて格段に拡大していると考えるべきです。
3. 反社チェック、すべての企業で必要?
企業にとって、反社チェックの不備によるビジネスへの損害や損失はもちろん、法令違反による罰則について考えることは企業規模の大小を問わず大切なことです。企業にとって、反社チェックの不備によるビジネスへの損害や損失はもちろん、法令違反による罰則について考えることは企業規模の大小を問わず大切なことです。そこで、まずは反社チェックとセットで想起されやすい代表的な例である「暴力団排除条例(暴排条例)」から、反社チェックがすべての企業で必要か、確かめてみましょう。暴排条例では、反社勢力との取引を行なわないよう努力することを企業に求めています。しかし、これは努力義務であり、ただちに企業側に罰則が科されるわけではありません。ただし、罰則ではないものの、反社勢力との付き合いが密接であれば、条例上の「暴力団関係者」とされ、排除の対象となる場合があります。そう考えると、新たに取引を始める企業に対してはもちろん、継続した取引がある企業に対しても反社チェックを徹底し、思わぬリスクを抱え込まないようにすることは必須だと言えます。
4. 反社チェック、大企業と中小企業で方法は違う?
反社チェックの方法は、大企業と中小企業で基本的に異なる部分はありません。企業規模よりむしろ問題とすべきなのは、相手企業との取引内容や関係性の深さ、自社にとって反社勢力との繋がりがあることが発覚した場合に被る損失や損害といったリスクについてでしょう。考えられるリスクを想定し、どこまで徹底して取り組むべきか見極める必要があります。そうした意味で、反社チェックは、経営方針や理念、経営計画にも密接に関わります。
5. 反社チェック、実施すべきタイミングとは?
一般的に、反社チェックは新たな取引が開始する時に行なわれます。そして、一度取引が始まれば、よほどのことがない限り再度行なうことがないのが実情だと言われます。
しかし、近年、企業の実態を明らかにしきれない企業や、資本関係が複雑に入り組んでおり適切に最終受益者(UBO)まで解明できない企業が世界的に増えています。ところが、日本ではそうした企業との取引がどのようなリスクになるのか想像してリスク評価をできていない、との指摘があります。
この状況を放置したままでいれば、マネーロンダリングや反社勢力への資金供与といった犯罪に巻き込まれるリスクが高まってしまうおそれがあります。
そのため、コンプライアンス部門が中心となって、取引相手が人事情報を発信するなど組織体制に変化があったタイミングのほか、数年に一度など期間を決めて定期的に「反社勢力と関係していないか?」と、スクリーニングすることが非常に重要です。
歴史ある企業や協力会社が多い場合、必然的に取引先が多いことが考えられます。一方、繰り返し反社チェックをするほどのコストやリソースを確保できない、という課題も出てくるかもしれません。しかし、反社チェックを怠った場合のリスクと比較すれば、反社チェックの労を惜しまないことがもたらすプラスの効果を納得できるはずです。
II. 反社チェックの目的、危ない業界とは?実例を基に解説
1. 反社チェック対策は十分ですか?気にすべき業界と業種とは?
まず、反社チェックを絶対に怠ってはならない業界として挙げられるのが、金融業界です。
もし、反社勢力との関わりが発覚し、それが海外でも問題になった場合、その銀行は外国の銀行と結んでいるコルレス契約(銀行相互間の為替取引契約)を解除されてしまうおそれもあります。コルレス契約の解除は様々な業界・企業にも影響が波及するため、非常に深刻です。また、最近では新興企業である仮想通貨を扱う事業者らも、銀行や金融機関と同程度のレベルで反社チェックを求められるようになっています。
一方、製造業でも反社チェックに注力すべき状況が深刻化しています。
米中対立やコロナ禍の影響を受けて加速するサプライチェーンの再編や複雑化するサプライチェーンを管理するためのサードパーティとの契約、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実践や最新テクノロジーを取り入れるための新興企業との提携、経営基盤の安定化や技術革新を目的としたM&Aなど、ビジネスを取り巻く環境はこれまで以上に大きく変動しています。そうした変化に伴い、取引先や協力関係を結ぶ企業が新たに増えるという企業は少なくないはずです。このような変化はこれまでにない成長の機会になる可能性もありますが、同時に、あらゆるリスクが“忍び込みやすい”状況にもなり得ます。「今までも問題が起きなかったので、これまでやっていたことを続けていれば安心だ」というわけにはいかなくなっているのが「反社チェック」の現在地だと言えるでしょう。
2. 反社チェック、過去の実例を解説
後に、反社チェックが機能しなかった実例とその顛末について、2つの実例を挙げておきましょう。
まず、ある金融機関では、反社チェックのコスト・リソース不足や組織体制の不備が原因となり、反社勢力との取引排除ができず、結果的に不適切な融資が行なわれていたというケースがありました。問題発覚後、当局はただちに立入調査を行ない、責任の所在の明確化や内部統制の強化、リスク管理体制の見直し、反社等の排除に向けた管理体制の抜本的な見直しを行なうよう行政処分を出しています。
このような事実は、ブランドや企業価値の毀損はもちろん、当局への定期的な改善への取り組みに関する進捗と状況の報告といった“新たな業務”という形で現場への負担を生むなど、多方面の影響に繋がると想像できます。
他方、海外では、あるメーカーが十分な反社チェックを行なわずに製品を販売し、最終的にそれが国際テロ組織の手に渡っていたというケースがあったようです。テロ組織の活動がニュース等で報道された時、そのメーカーの製品のロゴが映り込んでしまえば、「テロ組織に製品を供与しているのではないか?」とのあらぬ疑いをかけられ、風評被害(レピュテーション・リスク)ほか、想定外のリスクを被ることも考えられるでしょう。これらの実例は過去の出来事ですが、今日では業界業種を問わず直面しうるリスクになっています。それを避けることが反社チェックの目的だ、というわけです。
III. まとめ
反社チェックの目的について、5つのポイントと実例を交えて解説してきました。これから本格的に反社チェック体制を構築しようとしている、または、いま利用しているサービスを含めてコンプライアンス・ガバナンス体制を全体的に見直そうとしている、という場面でお役に立てば幸いです。
リフィニティブはこれからも、反社チェックをはじめとする企業のリスク低減に向けた取り組みに役立つ優れたデータとソリューションを提供し、すべての企業が安心してビジネスを推進できる環境を整えられるよう、支援してまいります。
参考文献
警視庁「東京都暴力団排除条例について」
関東財務局「西武信用金庫に対する行政処分について(令和元年5月24日) 」
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