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知りたい投信 なるほどリッパー : 2022年11月24日
「インデックスファンド」わかりやすいが奥も深い
ここ最近、資金流入が目立つインデックスファンドについて、 国内で販売されているインデックスファンドの残高上位100銘柄を用い、インデックスファンドの種類などについて詳しく解説した。
インデックスファンドに熱い視線が集まっています。それはリッパーのデータでも明らかで、国内販売の投資信託データを集計していると、月を追うごとにインデックスファンドへの資金流入が目立つようになっています。
そのような中で、最近よく耳にするのは「投資ビギナーはインデックスファンドから」「インデックスファンドなら、相場の上下があっても安心」といった安易な言葉。「インデックスファンドを買った」とおっしゃるので、どこの市場に連動するインデックスなのかと問いかけると、「よくわからない」という声が返ってくることも少なくありません。
そこで今回は、国内で販売されているインデックスファンドの残高上位100銘柄を集計し、インデックスファンドの種類について解説しましょう。
I. 「インデックスファンド」といっても、投資対象はさまざま
「インデックスファンドは市場全体の動きに連動するから、価格変動を把握しやすい」とよく言われます。では、どの市場に連動するインデックスファンドがあるのでしょうか。【グラフ1】は、本数ベースで見た、残高上位100銘柄の投資対象市場の分布です。

最も多いのは日本株のインデックスファンド。東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価に連動するインデックスファンドです。次は米国株とグローバル株が 20 本ずつで並びました。米国株のインデックスは、S&P500 やニューヨーク・ダウ平均株価(NYダウ)が良く知られています。
本数で見た 100 銘柄の分布と、残高ベースで見た分布は、違った景色になります。【グラフ2】は、同じく残高上位 100 銘柄のインデックスファンドを用いて、純資産残高で投資対象の市場ごとに集計した分布です。

100 銘柄の残高合計のうち、35%が米国株市場に連動するインデックスファンドです。次いでグローバル株、つまり世界中の株式市場に連動するインデックスファンドが 25%を占めています。日本株市場やミックスアセットは、本数に比べて残高のシェアは低くなっています。
日本の株式市場と米国の株式市場は連動性が高いと言われますが、大まかな方向性が同じでも、全く同じなわけではありません。また、先進国と新興国の株式市場が違った動きをすることもあります。まして、REITや債券は、株式と全く違う値動きをする場合が多いものです。
それらをすべて同列に扱って、「インデックスファンドは●●」とひとまとめに語ってしまっては、賢明な投資判断はできないでしょう。
II. 日本の株式市場全体を表す?
「インデックスは市場全体の動きを表す」とはいえ、厳密には、同じ市場でもインデックスごとに特徴は異なります。
例えば、東京株式市場の場合、TOPIXと日経平均株価が有名です。しかし、この 2 つのインデックスは、別の定義で作られている指標です。TOPIX は、現在の東京プライム市場のほぼ全銘柄について、浮動株の時価総額を基準に計算された指数です。一方、日経平均株価は「日経225」とも呼ばれるように、225 社の株価の平均値を基準に計算しています。
TOPIX は東証で売買される株式全体に近いですが、日経平均株価は、日本経済新聞社が選んだ 225 社の株価の動きです。市場全体というよりは、大企業の株価の動向に近くなります。値嵩株の値動きの影響を受けやすい傾向です。
この特徴を理解したうえで、TOPIX 連動型のインデックスファンドを選ぶか、日経平均連動型を選ぶか、またはほかのインデックスを選ぶか、という判断になるのです。
先の【グラフ1】で示した日本株のインデックスファンド 24 本の内訳は、日経平均連動型が 20 本、TOPIX 連動型が 4 本です。残高ベースでは、日経平均連動型が 9 割、TOPIX 連動型が1割です。ただし、この集計は、上場投資信託(ETF)、確定拠出年金専用投信、ラップ専用投信を除いたベースで計算しています。
III. 米国株のインデックスファンドは、S&P500が主流
同様に、米国株市場にも様々な株価指標が存在しています。日本では、海外市場のニュースでニューヨーク・ダウ(NY ダウ)が報じられることが多いでしょう。けれど、運用の現場では【グラフ3】のように、S&P500 が使われることが多いのです。

NYダウの構成銘柄は 30 銘柄です。とても米国株市場全体を示しているとは言えません。名前が知られているからなのか、ファンドの本数としては、NY ダウの方が 1 本多いですが、残高は S&P500 がダントツです。「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」は、あまり耳なじみがないかもしれませんが、時価総額加重平均型の株価指数で、米国上場の大型株から小型株までを網羅しています。投資可能銘柄のほぼ 100%となる約 4,000 銘柄で構成、これこそ「米国市場全体を移す」というインデックスです。
IV. グローバル株のインデックスに「日本を除く」とあるのは
グローバル株のインデックスファンドは、全世界の株式市場が 1 つの指標になっているインデックスに連動します。連動するインデックスは、「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス」、「FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス」などが代表的です。
これらのインデックスは、全世界の株式市場に「均等に」投資をしているわけではありません。上記 2 つはどちらも、それぞれの国や地域の株式市場の時価総額に比例する構成です。ほかには、世界各国・地域のGDP に比例するように投資対象国を配分するワールドインデックスもあります。
「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス」と「FTSE グローバル・オールキャップ・インデックス」の違いを簡単にご紹介しておきましょう。数カ国の違いはあるものの、どちらも、投資する市場は先進国と新興国を合わせて約 50 カ国の株式市場です。大きく異なる点は、構成する株式の規模です。
「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス」を構成する株式は、大型株と中型株で約 3,000 銘柄。全世界の株式の約 85%をカバーしています。一方、「FTSE グローバル・オールキャップ・インデックス」は、「オールキャップ」と名がつく通り、大型株、中型株、小型株すべてで構成されています。小型株も組み入れているため、9,000 銘柄強と銘柄数が多く、全世界の株式の約 98% をカバーしています。
また、グローバル株のインデックスに「MSCI コクサイ・インデックス」というものがあります。これは、日本を除く先進国の株式市場のインデックスです。多くの場合、日本の投資家は日本の個別株や投信を保有していることでしょう。国際分散投資を考えたとき、グローバル株指数から日本を除いたインデックスを使うことで、日本株への偏重を防げます。
この理由から「日本を除く」はよく利用されており、【グラフ1】で示したグローバル株のインデックスファンド 16 本のうち、10 本が MSCI コクサイ・インデックスに連動するファンドです。
V. ミックスアセットは「ファンドを集めたファンド」
ミックスアセットは、目論見書などに「資産複合」と記載されています。文字通り、国内外の株式、債券、REIT などの資産を複数集めた運用です。このタイプのインデックスファンドの多くは、運用会社が各市場のインデックスファンドを買い集めて、複数のファンドで構成されるポートフォリオが1本のファンドの形になっているものです。この運用方式をファミリーファンド方式といいます。
インデックスファンドの説明として、よく「インデックスファンドは市場全体の動きに連動するから、価格変動を把握しやすい」と言われます。けれど、ミックスアセットの場合は、そうはいきません。少なくとも2つ以上、多いケースでは9種類ほどのインデックスファンドを組み入れています。
例えば日本の「TOPIX」、日本を除く先進国株式の指標「MSCI コクサイ・インデックス」、新興国株式の指標「MSCI エマージング・マーケット・インデックス」、世界の債券指標「FTSE 世界国債インデックス」、国内の REIT を示す「東証 REIT 指数」、先進国の REIT は「S&P 先進国 REIT インデックス」で、6つの市場に6分の 1 ずつ投資する――といった運用方針です。
ニュースで「今日の東京株式市場は、●●円の値上がりでした」と報じていても、ミックスアセットのファンドが値上がりしているとは限りません。そのファンドが、どの市場のインデックスを、どの程度の割合で保有しているかをきちんと理解しておく必要があります。
しかも、地域と資産の組み合わせと、それらの配分を考えたら、パターンは無限大です。さらには、運用会社が、市場環境に応じて各インデックスの保有割合を調整する投信もあります。随時、月次レポートに目を通し、現状で保有しているインデックスの割合を、ある程度は理解していなければなりません。
とはいえ、一見このように複雑に感じるミックスアセットですが、分散投資の幅が広いが高いため、一つの市場のインデックスに連動する投信よりも、リスク軽減効果は高い傾向があります。
VI. まとめ
このように、一口に「インデックスファンド」と言っても、どこの市場のどんなインデックスに連動するのかで、全く違う投信になってしまいます。当然、運用成果も異なります。いつまでも「初心者はインデックスファンド」と言い続けているのではなく、保有しているインデックスファンドにしっかり向き合ってみましょう。するといつの間にか知識が身につき、経験も重なって、ビギナーから脱出できるはずです。ご自身の運用プランを立てられるようになれたら、資産形成がもっと楽しくなると思いますよ。