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知りたい投信 なるほどリッパー : 2022年8月5日

7月までの投資信託の資金動向

2022年7月の日本国内の投資信託市場全体の資金フローについて、詳しく解説した。ETFの純流出や、日本株投信の純流出が目立った。一方、資金流出が続いていた米国籍ファンドが純流入に転じた。また、リッパースコアが低めの銘柄は、資金流出傾向にあった。

リッパーの推計によると、2022年7月における日本国内の株式オープン投資信託市場全体の資金フローは、上場投資信託(ETF)の純流出や、日本株投信の純流出が目立ちました。国籍別では、資金流出が続いていた米国籍ファンドが純流入に転じました。では詳しく見ていきましょう。

I. ETFは、アベノミクス以後の純流入額が最低に

2022年7月の国内の公募投資信託市場では、公募投信の純流入額が減少し、ETFが純流出に転じています。

ETFを除く公募株式オープン投信は、4,548億円の純流入となりました。流入超過は20カ月連続ですが、純流入額は前月から半減。ETFを含めた集計では3,016億円の純流入で、こちらも31カ月連続の流入超過となったものの、純流入額は前月の3分の1でした。

グラフ1は、データをさかのぼることができる2003年以降、年ごとに資金動向を比較した1~7月の累計です。

棒グラフの茶色の部分はETFへの資金流出入額です。今年の1~7月は、2012年の衆院選で誕生した第二次安倍政権の「アベノミクス」以後、ETFへの資金流入が最低となりました。日本銀行が2021年3月にETF買入れの政策を変更した影響が表れています。

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II. 投資対象別では「株式型 日本」が大幅な流出超過

国内で販売されている投信の資金フローを、リッパーの投資対象別分類でまとめました。ETFを除くベースで、「株式型 米国」が7月まで14カ月連続で純流入額トップです。ただ、純流入額は年初から徐々に縮小しています。追随する「株式型 グローバル」や「株式型 グローバル 除日本」は、米国株式の組入比率が約6割という投信が多く属しています。日本での米国株人気、グローバル株人気は健在です。

一方、流出超過の分類は、「株式型 日本」からの資金流出が目立ちました。6月までの累計で4,205億円の純流出でしたが、7月は単月で719億円が純流出。1~7月の累計では純流入額が3,486億円で、分類別の順位を1つ落としました。

グラフ2は、純資産総額上位10分類です。

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III. リッパースコアが低めの銘柄は資金流出傾向

個別のファンドでも、1~7月の資金フローを累計しました。純流入額、純流出額のそれぞれ上位5銘柄は、表の通りです。多額の資金が動きがちなラップ専用投信、および確定拠出年金専用投信を除外しています。

純流入額上位5銘柄のうち、インデックスファンドが4銘柄です。6月までの累計では3銘柄でした。総じてインデックスファンドへの資金流入は安定的で、順位を上げています。

知りたい投信 なるほどリッパー : 2022年8月5日: 7月までの投資信託の資金動向

純流出上位には、『Refinitiv Lipper』投信評価で収益面のスコアが特に劣る銘柄がランクインしています。

総合収益性(トータルリターン)は、分配金再投資ベースの基準価額の変化を計算し、同じ分類内でランキングしたものです。分配金込基準価額の総合的な収益率が低いと、スコアが低くなります。収益一貫性(コンシスタント・リターン)は、リスク調整後リターンで評価します。同一分類内の比較で、値動きのブレが相対的に大きいことを表しています。

IV. 流入超過に転じた米国籍ファンド

グラフ3は、2022年3月~7月における、ファンドの国籍別の資金動向です。先月までは世界の株式市場の時価総額上位10の国・地域を示しましたが、今回は、ファンドの時価総額が大きい国籍について、上位10の国・地域を掲載しています。

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3ヵ月にわたって資金超過が続いていた米国籍ファンドが、純流入に転じました。米国はファンドの市場規模が大きいため、棒グラフの長さが目立ちますが、純資産に対する資金フローの割合(グラフ中では緑色のひし形でプロット)を見ると、フランスが突出して流出しています。

こうして見ると、日本の投信市場は健闘していることがわかります。長らく「元本割れの可能性があるから投信はイヤ」という声を聞いてきました。ようやく、資産形成の1つとして投信が受け入れられ始めたような気がしています。

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