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知りたい投信 なるほどリッパー : 2021年2月5日

コロナ禍の日銀ETF買い 株価支える「官製相場」の批判も 

3月の金融政策決定会合での政策の見直しに注目が集まっている、2020年の相場を支えた日銀のETFとJ-REITの買い入れの内容について詳しく解説した。ETFの最大保有者である日銀が、ETFを売却する側に回ると相場の下落を招くのではないかと懸念されている。

コロナ禍の日銀ETF買い 株価支える「官製相場」の批判も 

 新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号が横浜に入港して1年が経ちました。その後、国内でも各地で感染が広がると人々の生活や行動が制限され、経済への影響が心配されるように。そこで日本銀行は2020年3月、金融緩和政策の強化に乗り出しました。

 金融市場を安定させるために、上場投資信託(ETF)の年間購入額の上限をそれまでの6兆円から12兆円、上場不動産投資信託(J-REIT)の上限を900億円から1800億円へと、どちらも倍増させています。

 「コロナショック」と呼ばれた株価の急落時には、日銀によるETFの購入額が1日で2000億円を超え、相場の下支えとなりました=グラフ。その後、株価が上昇するにしたがって、ETFの購入は控えめになっていきました。昨年末には30年ぶりの水準まで株価が上昇。ETF、J―REITともに日銀の出番は減り、年間の上限までは購入しませんでした=表。

 本来、日銀がETFを買うのは金融市場の資金繰り支援策だったはずですが、株式市場の下値を支える、いわゆる「官製相場」の担い手となっているのが実態です。株式取引をしている投資家は、日経平均株価の値動きを見て日銀のETF購入を予測し、投資判断を下すようになってしまいました。これが長く続くと、市場が持つ価格調整の機能をゆがめてしまいます。

 また、実体経済が低迷しているのに、株価が高いという状態は不自然です。企業業績は回復しているように見えますが、大規模な財政支出や金融緩和によるもので、本来の好景気による株高とはちょっと違います。以前から日銀のETF購入のデメリットは心配されていましたが、コロナ禍の今、株価を支えるという大義名分にあぐらをかき、副作用には目をつぶっているように思われます。

 相場を支え続けた日銀は、今やETFの最大保有者です。その巨額マネーがETFを売る側に回ると、相場の下落を招くのではないかと心配する声が聞かれます。日銀は「売却など出口の議論はまったく時期尚早です」としながらも、今年3月の金融政策決定会合で政策を見直すかどうかに注目が集まっています。