知りたい投信 なるほどリッパー : 2021年9月10日

10兆円復活なるかリート投信、コロナ禍で回復の地域差目立つ

運用資産残高が再び10兆円に近付いているREITについて、資金流出入及びパフォーマンスを地域別に比較した。コロナ禍の影響や経済の回復により、地域差があることが明らかになった。

10兆円復活なるかリート投信、コロナ禍で回復の地域差目立つ 

不動産投資信託(REIT〈リート〉)が運用対象のリート投信の残高が、再び10兆円を目指す動きです=折れ線グラフ。国内販売の純資産総額(2021年7月末)合計は、上場投資信託(ETF)や確定拠出年金専用を含め、9兆5577億円。コロナ禍で20年3月に7兆円余に減少した後、11月から9カ月連続の増加です。

残高の最高は16年12月で、13兆円を超えていました。その後、米国の政策金利引き上げで残高が減少。利上げをやめると増加に転じ、利下げで9兆円台後半に戻したところに、20年3月のコロナショックが直撃しました。

リモートワークでオフィス需要が低迷し、ホテルは観光客が激減。リート投信には大打撃でした。20年は、グローバル型、米国型、日本型のいずれのリート投信も1年で10%台のマイナス。しかし投資家の支持は根強く、リート投信全体の流入超過は11月まで続いていました。

ただし、20年後半は、地域ごとに動向が分かれています。世界中のREITが対象のグローバル型は、リッパーの推計で20年8月から12カ月連続の流出超過。米国のREITが対象の米国型は、11月から流出入を繰り返しています。資金の逃避というより、利益確定の解約ではないかと見ています。

米国のワクチン接種が進み、経済対策も功を奏し、グローバル型や米国型リートの運用は好調。多くの銘柄が今年7月までの半年間で20~30%値上がり、1年間では30~40%上昇しています。経済が正常化に向かう米国では、量的緩和の縮小が取りざたされています。利上げになれば、リート投信には逆風です。

コロナ禍でも資金が入り続けた日本型は、今年3月の金融政策の方針変更で、7月まで5カ月連続の流出超過に。日銀が年900億円のREITの購入目安をなくした影響を受けています。足元の運用成績は、米国型ほど振るいません。緊急事態宣言による経済の停滞も心配です。

リート投信全体の純資産は、半分が日本型です=横棒グラフ。残高が10兆円に戻るかどうかは、日本経済の回復次第かもしれません。

担当=DZHフィナンシャルリサーチ・石原敬子
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