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- 2022年12月20日掲載 : 新型コロナ、ロシアのウクライナ侵攻、FRB金融政策の転換で新興国ファンドはどうなっているか
知りたい投信 なるほどリッパー : 2022年12月20日
新型コロナ、ロシアのウクライナ侵攻、FRB金融政策の転換で新興国ファンドはどうなっているか
中国の混乱、世界的なインフレ、ロシアによるウクライナへの侵攻、米国の金融引き締めなど、様々な逆風が吹いている新興国の投資信託の現状について解説した。
新型コロナウィルスが発生して3年。中国の新型コロナを巡る混乱、世界的なインフレ、ロシアによるウクライナへの侵攻、米国の金融引き締めなど、新興国の金融市場には様々な逆風が吹いています。
新興国を投資対象にする投資信託の現状について、リッパーのデータを基にお伝えします。
I. 新興国を投資対象とする国内ファンド
新興国とは、現時点では経済の水準が低いものの、高い成長が期待されている国や地域を指します。東南アジアや中東、東欧、中南米に多く、エマージング国とも呼ばれています。中でも、「BRICs」と呼ばれる国々は、高い経済成長を背景に、2000年ごろから投資対象として注目されてきました。BRICsは、ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の頭文字を並べた、ゴールドマン・サックス時代にキャシー・松井氏が名付けた造語です。後に、南アフリカ(South Africa)を加えて、最後の小文字のsを大文字のSに替えて呼ばれるようにもなりました。
個人投資家がこれらの新興国に投資をする場合、国内の証券会社で外国株の取引を行うか、証券会社や銀行で取り扱う投資信託を購入する方法が一般的です。
投資対象が新興国である日本国籍の投資信託は、リッパーの投資対象分類別に残高を集計すると、インド株のファンドと世界の新興国株式市場に分散投資をするファンドがほぼ同じ規模でトップに位置しています【グラフ1】。BRICsを構成するブラジルとロシアは、日本国籍のファンドとしては残高が相対的に少なく、純資産総額の大きい分類順に並べると、圏外になりました。

II. 新興国ファンドの運用成績は?
新興国ファンドの運用成績を見ると、国ごとの事情が表れています。株式型については【グラフ2】でBRICsを構成する4 ヵ月の投信と、リッパーの投資対象で「株式型 エマージングマーケット」に分類される投信について、各類内で騰落率を単純平均しました。

ロシアは、もはや「新興国」とも呼ばれなくなりました。MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)が算出する、新興国の大・中型株が対象の「MSCI エマージング・マーケッツ指数」の2022 年の見直しで除外されたのです。経済制裁を受けている状況では、投資対象になり得ないためです。
中国で長らく続いた中国都市部の都市封鎖(ロックダウン)は、経済へのダメージが株価下落からも読み取れます。緩和されると運用はプラスに転じましたが、北京で感染が爆発的に広がるなど、今後の見通しが難しくなっています。
III. 新興国の債券ファンドは、通貨によって明暗
リッパーの投資対象分類では、新興国債券について、額面の通貨で細分化しています。現地通貨建てをローカルカレンシーといい、略して「LC」と記載しています。米ドル建てなど主要先進国通貨建てはハードカレンシーで、「HC」としています。
新興国債券の運用成績は、通貨の違いが結果を大きく分けました。【グラフ3】では、「債券型 エマージンググローバルLC」と「債券型 エマージンググローバルHC」の分類に属するファンドの騰落率を単純平均したものです。
なお、ここで取り上げているファンドは、国内で販売されている日本国籍のファンドです。つまり円建ての基準価額。投資対象である先進国通貨建ての債券は、多くが米ドル建てです。直近1 ヵ月こそ逆転したものの、米ドル高円安の為替相場の影響をまともに受けていることがわかります。

IV. 新興国グローバル株ファンドには資金流入が続いている
最後に、新興国ファンドの資金動向を見ておきましょう。【グラフ4】では、投資対象分類で集計した残高上位5 分類について、毎月のファンドへの純流出入額の推移を示しました。

気になる点を挙げるとすれば、規模は比較的小さめですが、中国株ファンドからの資金流出が2021 年5 月から19 ヵ月連続していること。中国のコロナ対策及び経済政策からは目が離せません。
しかし、「株式型 エマージングマーケット グローバル」分類の純流入は、2021 年11 月から13 ヵ月連続です。
全体的には、新興国の金融市場に対して厳しい環境下と思われましたが、直近2 年ほどは大規模な資金流出が見られないのが現状です。新興国への投資は、長期的な視野を前提に、経済成長に期待している面があると見て良さそうです。