2022年4月 : 特別対談記事

大きな転換点を迎える市場環境に個人投資家はどう向き合うべきか

―頼れるのは自分かAIか?-

2022年4月特別対談
大きな転換点を迎える市場環境に個人投資家はどう向き合うべきか -頼れるのは自分かAIか?-

世界的に先行きが不透明な状況が広がっている中で、これからの資産形成に頭を悩ませている個人投資家も多いはず。「自分で判断する」代わりとなるのか、AIによる運用も脚光を浴びています。転換期を迎える時代の資産運用について、個人投資家をよく知る株式会社 FOLIO 代表取締役 甲斐真一郎氏、ファイナンシャル・プランナー石原敬子氏を迎えて、リフィニティブ・ジャパン株式会社代表取締役 富田秀夫が、目先の市場変動に惑わされない資産形成術に迫ります。

 2022年のマーケットはボラティリティが高くなると予想されていましたが、ウクライナ情勢の深刻化で、その傾向が強まっています。マーケットの先行きを見通すのが難しいなかで、個人投資家や家計を預かる人たちが、とるべき行動についてご意見を伺えますか?

石原 私は、一方的に上昇したような2021年までの相場よりも、ボラティリティの高い時が、トレンドでもある積立投資にとっては有利な環境だと感じています。

富田なるほど。甲斐さんはいかがでしょうか?

甲斐 米国の積極的な利上げ姿勢、ナスダック・マザーズの暴落、昨今の地政学リスクなど、改めて短期的に相場を予測することは難しいと感じています。一方で中長期は比較的予測が可能だと言われています。例えば、CO2の排出抑制が行われることは凡そ確かなので、今後電気自動車や、その部品を供給している半導体メーカーへ需要が流れることは予想できます。一方で、明日の株価が上がるか下がるかの予測は非常に難しいです。基本的なスタンスとしては中長期目線で資産形成を考えつつ、短期的な相場の上下に対しては積み立てによって時間分散を図っていくという選択肢が有効かと思います。

富田 キーワードとしては積み立て、分散でしょうか。分散には積立のように、時間の分散もありますが、地域分散、アセットクラスの分散も考えられます。地域分散は現在のように投資できない地域が出てくると難しいという見方と、だからこそ分散に価値があるという見方もありますが、今後の分散投資にはどのように臨めばよいでしょうか?

石原 分散とはいえ、好きなものを数銘柄集めて、偏った分散をしている方が非常に多いです。また、全世界に投資をする場合、一般的には時価総額で分散されるので、実際6割程度は米国株です。そのような現状を知らずに、欧米、日、アジアを均等に分散している。有事の際に「所有しているオールカントリーの投資信託はロシア、ヨーロッパがどの程度入っているの?」と、基本的な部分を理解していない方もいらっしゃるので、まず金融リテラシーを持つことから働きかけたいと思っています。

富田 認識と実体にズレがあるということですね。甲斐さんはいかがでしょうか?

甲斐 今、世界中の中央銀行が利上げに踏み切る中、日本銀行は未だ超金融緩和を維持する姿勢を堅持しています。実質的GDP成長率や経常収支を見ても、円安のバイアスが非常に強い状況にあります。つまり、円という通貨でほぼ全ての資産を持つこともリスクだと考えています。また、今の状況は、想像をはるかに上回る地政学リスクの顕在化だといえるでしょう。そういった意味で、資産の地域分散は非常に重要だと思っています。地政学リスクはこれからもどの国にも内在するわけですから、通貨やアセットに対する分散を継続していくことの重要性が増していると感じますね。

混迷を深める世界情勢の中で投資信託の活用法とは

富田 普通の個人投資家や、いわゆる家計を預かっている方にとっては、投資信託は近づきやすい金融商品だと思っています。どのように活用すればよいでしょうか?

石原 運用方針や資金、人によって活用方法は変わってきます。先ほど中長期は予測しやすいというお話のなかで電気自動車が挙がりましたが、どのメーカーがよいか分からない時にはテーマ型ファンドを買えば良いと思いますし、株式投資のもう少し緩い感じで投資信託を使うことも可能です。分散投資の積み立てとして老後資金をコツコツ貯めたい。でも自分は仕事に集中したいからお金のことは運用者に任せてしまうという使い方もできます。
そもそも、今時何が適した運用なんですか?というよりも、それぞれの運用方法があってよいと思っています。

富田 現在日本では公募投信だけで6,000本弱あり、その中でどれを選択するかは相当難しいと思われますが、何かアドバイスはありますか?

石原 どう選ぶかはリフィニティブさんが出しているようなリッパーファンドアワードですとか、中立な評価機関の投資ランキングや表彰ファンドなどを参考にしていただきたいですね。後は投資信託の目論見書の冒頭に書いてある運用方針が自分の思っている考えと近いかどうかも重要です。先ほどの例で言うと電気自動車は将来性があると思っている方は、その運用方針を見て納得できるテーマ株投信を購入する、などです。

富田 自分なりの調査が必要ということですね。ありがとうございます。ちょうど2年ほど前に新型コロナウイルスが世界で猛威を振るい始め、株式市場にも大きな下落圧力がかかりました。あんなに落ちるわけない…と思いつつも、足元の膨れ上がる評価損を見て行動ができず、その後の回復に乗り遅れた方も非常に多かったことでしょう。こういった人間の行動特性から逃れるためには、AIを活用することも一つの有力な選択肢になると思えますが、専門家の目から見ていかがでしょうか?

甲斐 行動経済学によれば、人間は損失回避バイアスがあると言われています。簡単にいうと、利得を得た喜びよりも、損をした痛みの方が大きいということです。これは投資において大きな弱点ですが、個人の投資家だけでなく、ファンドマネージャーにもあてはまることだと思っています。実際にコロナショックにおいて、リスクアセットを売ってしまった方もいらっしゃると聞いているくらいですから。
私は、この状況に関してはAIによる相場予測は大きな解決策になりうると考えています。機械学習は感情に左右されず、損失回避バイアスが存在しません。実際に我々は「FOLIO ROBO PRO」というAIを用いた機械学習で、アセットクラスの1ヶ月先を予測するというロボアドバイザーのサービスを提供しているのですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響による下落相場が始まる2020年1月の投資配分では、債券への投資比率を40%超まで高めることなどによって、相場下落のショックを和らげました。また、相場下落時の買い直しに関しては、2020年3月半ばの相場回復の局面において、債券の保有比率を引き下げ、不動産を引き上げました。通常であれば、狼狽売りに巻き込まれるような相場でも、冷静にリスクアセットを買うことができた。これはAI自動運用の利点だと感じています。

注目を集めるラップとは?

富田 そうした中で投資信託と並ぶカテゴリーでラップがあり、最近では各社が力を入れて取り組まれていらっしゃいます。メリットなどを教えていただけますか?

甲斐 弊社とSBI証券の協業で先日リリースした「SBIラップ」は、AIが相場予測をして損失回避及び利益の最大化を目指すファンドラップになっています。ラップにはブラックボックスが多いという意見に対しては、ホワイトペーパーによって運用方針の開示や、銘柄選定の開示も行います。投資配分の比率も常に開示し、どのように運用を行なっているのかは常に確認することが可能です。また、実際にAIが示した挙動に関しても、実データを用いて解説を行い、可能な限り情報開示を行う努力をしています。セミナーの定期的な開催やマンスリーレポートを出すなど、安心してサービスを利用していただける仕組みにしていく予定です。

富田 投資家のリスク選考によって、さまざまな選択肢が求められるような気がしますが、多様なニーズに対する対応はいかがですか?

甲斐 先ほどもお話した通り、SBIラップの第一弾は非常に分かりやすく、AIの将来予測をもとに最適と考えられるアセットアロケーションで収益を追求する形を基本としています。しかし、SBIラップはそれだけではなく、第二弾・第三弾と、続々と運用商品の追加を考えております。リスク許容度診断が可能な運用商品もローンチしていきたいと考えております。従来の「ファンドラップ商品は基本1つ」という考えではなく、より多様なニーズにお応えできるようなラップサービスの展開を考えています。

富田 富裕層を対象に始まったサービスですが、最近では裾野が拡大しているように見えます。どういった層を対象とされる商品か、もう少し具体的に教えていただけますか?

甲斐 従来のファンドラップは富裕層向けで、最低投資金額も手数料も高い商品が多かったのですが、SBIラップの投資一任手数料は年率0.66%(税込)ですし、自動運用のため手間もかかりません。初心者から富裕層まで、幅広い方にご利用いただける運用商品であると考えております。

富田 手数料に関しては、官民挙げての取り組みの結果、以前と比べるとかなり改善してきていることも事実だと思います。一方、手数料ばかりがクローズアップされたことで、そこばかりを見て、投資先を決めることにもなりがちです。手数料をどの程度考慮して投資先を決めたらよいかアドバイスいただけますか?

石原 高い、安いだけで見るのではなく、適正なサービスに見合う対価なのかを見極められる投資家になってほしいですね。販売会社のウェブサイトが利用しやすいか、アフターサービスがあるか、マンスリーレポートが分かりやすい内容になっているのかなど、手厚いサービスであれば高い信託報酬でも適していると判断できると思います。店舗のある証券会社で、営業員さんとの会話の中からよい商品を選べるのであれば、店舗で取り扱う運用商品の手数料は高くても当然ではないかと。手数料を何のために払っているのかを自覚し、安ければ良いとは思わないでほしいですね。
SBIラップはAIを活用した投資商品のため、確かに手数料が安くなるかと思います。でも甲斐様にお願いしたいのは、良い商品ができたのならば、高い手数料をとってほしい。実績があるからこのサービスは1番なんだ!みたいな売り出し方、カラーでやっていただきたいなと。

富田 トータルリターン報告書が定期的に送られてくるようになりましたが、こうした文書は活用できるでしょうか?

石原 運用の結果ですから、もちろん投資家は見るべきです。プロに運用を任せているとはいえ、自分のお金がどうなっているかは、見なければいけません。なので、報告書類、開示書類は是非投資家が見るような姿勢に啓蒙していきたいと思っています。

富田 ありがとうございます。手数料率に関しても甲斐さんは積極的に取り組んでいらっしゃいますね。

甲斐 おっしゃられた通り、安かろう悪かろうというような粗悪品を売ることはもっての他だと思っています。また、投資家がハイパフォーマンスを求めることも当然です。例え手数料が高くてもトータルリターンとして上がっていれば納得してもらえると考えています。この点、まず金融商品の提供者として言えば、可能な限り運用執行及び投資判断の部分も含めた自動化に取り組んでいます。パフォーマンスを維持しつつ、多くのお客様に対応できることで、コストメリットが生まれ手数料を下げることが可能になります。
もうひとつは今回のSBIラップでも実装したように、「金融システムを安価に提供する」ということです。これにより、トータルで金融商品の運用報酬を下げることが可能となりました。
テクノロジーの進化は多くの効率化を生み出します。我々はその領域を追求し、よりコスト効率の高い金融サービスを提供し続けていきます。

新たなテクノロジーが若い世代の目を資産形成に向けさせている

富田 今後投資においてもますます新しいテクノロジーが活用されていくと思います。家計簿アプリなどの活用が広がっており、石原さんは投資だけでなく家計全般についてもアドバイスされていますが、こうしたアプリの活用はどのようにご覧になっていますか?

石原 家計簿アプリとの連携について、資産運用をしている利用者ならば、有料サービスであっても私は推奨しています。普通預金、現金、運用残高など、その日のトータルの金融資産が見られますから。身近な端末で日頃から残高が閲覧できれば、関心を持ちやすくなることはもちろん、相場が急変した際にすぐ確認ができますから。

富田 個人金融資産が2,000兆円を超えたと言いながら、一方で通常の家計で考えると住宅ローンが大きな割合を占めていて、この資産の部分だけをフォーカスするのではなく、負債も含めた全体で考えることが重要だなとお話を聞いていて感じました。
甲斐さんはテクノロジー活用のパイオニアとして市場変革の最前線に立たれていますが、手応えや変化を感じていますか?

甲斐 資産形成 × テクノロジー活用という点では、まさに自動運用などでAIを活用することは、ストレスを低減した資産形成が期待できるという点で、個人の資産形成が進むいい事例かもしれません。
また家計簿アプリとの連携でいうと、家計簿アプリ側としては連携に前向きな声が聞かれます。ただ、やはり顧客の利便性を高めるためにもAPI開放は必須だと考えています。特に取引指図までできるような形の更新系APIの構築・開放は重要なポイントになろうかと思います。一方でシステムにコストをかけてまで対応ができないという金融機関はまだまだありますし、これから技術の進化によって、可能な限りシームレスに貯金と資産形成が繋がっていく世界を作っていく余地があると思いますね。

富田 石原さんは長年個人投資家の方や家計を預かっている方と向き合われて、時代の変化を感じられますか?

石原 損をするのは嫌だとおっしゃる方が減りましたね。もちろん嫌だとは思うのですが、投資をするからには少なからず損をすることもあるよね、ということが理解でき、自分が動かないとお金は増えていかないことを自覚されている方が増えています。これは投資を行う年齢層が下がっていることも要因かと思いますが。

富田 やはり年代によって違いを感じられますか?

石原 はい。感じますね。一番損をしたくないとおっしゃっているのは40代後半から50代という感覚です。20代、30代の方に関しては、育ってきた環境がすでにデフレだったり、親御さんが失業する経験をされていたりと、リスクを歩んできている層。育ってきた時代によって考え方が違っていると思います。リスクに対応できる層(20代)が就職し、お金が自由になったことで投資を始めたいという相談も増えています。一昔前はしっかりとお金を固めている方が相談に見えることが多かったので、この世代の違いが私から見ると変化になっていますね。

富田 なるほど。甲斐さんは変化についていかがですか?

甲斐 実際弊社のデータを見ていても、投資デビューしている人は増えています。その中で初心者ほど損失に慣れていなかったり、まだ投資というものを学んでいる最中でもあるので、少しの損失で大きな不安を抱えてしまうこともわかってきています。
そういう意味では、テクノロジーだけではなく、しっかりと時間をかけて金融教育を地道に広げていくことの重要性を強く感じています。短期的には損失もあるけれど中長期でしっかりと続けていれば資産は伸びるということをしっかりと学べるような仕組み作りも行っていき、資産形成の世の中が変わっていくことを期待しています。

富田 甲斐さん、石原さん、本日は不確実性高まる時代の資産形成について貴重なアドバイスをありがとうございました。

株式会社FOLIOホールディングス
代表取締役CEO 甲斐 真一郎

京都大学法学部卒。2006年よりゴールドマン・サックス証券に入社し日本国債・金利デリバティブトレーディングに従事する。2010年にはバークレイズ証券に転籍しアルゴリズム・金利オプショントレーディングの責任者を兼任する。2015年11月に同社を退職し株式会社FOLIOを創業。

ライフプラン→マネープラン研究所
代表  石原 敬子

証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーとして開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使し、対話重視のFP相談、顧客に行動を促すセミナー講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。日本証券業協会 金融・証券インストラクター。終活アドバイザー。

リフィニティブ・ジャパン株式会社
代表取締役社長 富田 秀夫

1982年3月 慶應義塾大学法学部卒。(株)共同通信社に入社後、国際金融情報分野を中心に担当。その後、金融情報/システム企業の役員を歴任し、2012 年7 月トムソン・ロイター・ジャパン株式会社 代表取締役社長に就任。2019年3月より同社の社名変更に伴い現職。2021年2月より、リフィニティブはロンドン証券取引所グループ傘下の事業となる。
日本金融学会、経済同友会会員。一般社団法人東京国際金融機構理事。

■株式会社FOLIO
金融商品取引業者関東財務局長(金商)第2983号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
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