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2020年9月14日掲載・M&Aオンライン

コロナ危機下の金融情報ニーズは?リフィニティブ・ジャパンの富田秀夫社長に聞く

コロナ危機下での金融情報データをめぐるニーズについて、リフィニティブ・ジャパンの代表取締役社長を務める富田秀夫がM&Aオンラインとのインタビューでこの状況を説明いたしました。

コロナ危機下の金融情報ニーズは?|リフィニティブ・ジャパンの富田秀夫社長に聞く

・コロナ下、金融インフラとして責任を果たす
・ESGデータへの関心が高まる
・上期のM&A件数、2013年以来の低水準
・コロナ後を見据えた事業再構築、秋以降が本番

米リフィニティブは世界有数の金融情報プロバイダー(提供元)を標ぼうする。前身はトムソン・ロイターの金融・リスク部門。2018年10月に独立し、米大手投資ファンドのブラックストーン・グループの傘下に入った。新生リフィニティブとして間もなく2年となる。

新型コロナウイルス感染症の収束がいぜん見通せない中で、ニュースやデータ・分析など金融情報サービスに対する顧客ニーズに変化はあるのか。またリフィニティブ自身、英ロンドン証券取引所グループ(LSEG)との経営統合という新局面を控える。日本法人のリフィニティブ・ジャパンを率いる富田秀夫社長に聞いた。

 

コロナ下、金融インフラとして責任を果たす
-新生リフィニティブとして、日本での認知度はどうですか。
日本では2019年3月に、名称をリフィニティブ・ジャパン(旧トムソン・ロイター・ジャパン)として第一歩を踏み出した。リフィニティブ(Refinitiv)は、最も信頼されるという意味の単語(definitive)とロイター(Reuters)を掛け合わせた造語。最初は問い返されることが少なくなかったが、今ではかなり浸透してきた。セミナー、イベントや広報宣伝など様々な機会をとらえ、社名に込めた思いを伝えてきたつもりだ。

ほとんどの金融機関、大手の事業法人と何らかの取引があり、ここまで業績も順調にきている。競合他社がデスクトップ中心であるのに対し、当社はオープンプラットフォーム戦略により、データを様々な形で利用してもらっている。とくにフィンテック関連で広がりが出ている。

新しい分野でいえば、KYC(顧客の本人確認)やコンプライアンス絡み。資金洗浄など金融犯罪対策として「ワールドチェック」というデータベースを展開するが、明らかに利用が伸びている。

-新型コロナが世界経済を直撃しています。
金融は新型コロナの状況にあっても活発に動いている。在宅勤務になろうが、情報はどうしても必要とされる。その点、恵まれた環境にある。世界的にみてもロックダウン(都市封鎖)などで一時は大変なことになっていたが、我々のシステム自体は円滑に機能してきた。

例えば、その一つとして外国為替にかかる電子取引プラットフォームを提供しているが、こちらは過去最高の取引件数に上った。コロナ下、経済を支える金融機能の一翼を担うインフラとしての責任を果たせているのではないかと思っている。

ESGデータへの関心が高まる
-コロナ危機で、金融情報サービスに対する顧客ニーズに何か変化は出ていますか。

自宅からのアクセスが増えたといったことはあるが、求められる情報内容に特段変化があったわけではない。こうした中、欧州を中心にESG(環境・社会・企業統治)絡みのデータへの関心がますます高まっている。日本でもしかりだ。

-そのESGデータに関して、どういった取り組みを。
6月に、「ESGスコア」というサービスを始めた。ESGへの取り組みを評価・比較するためのデータ指標で、排出量、環境製品の革新性、多様性、人権、株主など10の主要要素から算出する。

企業を評価する際、ESG要素が従来の財務諸表並みに重要視されるようになっている。しかし、ESGデータには標準的な報告基準が定まっていないため、企業によって表示が異なるのが実情だった。そこですべての企業、すべての地域にまたがって比較できるように、同一条件下での定量分析を実現した。まさにリフィニティブならでは新サービスといえるだろう。

上期のM&A件数、2013年以来の低水準
-折からの新型コロナはM&A市場に冷や水を浴びせましたが、足元の現状は。2020年1~6月(上期)の世界のM&Aは1万9923件、1兆2000億ドル(リフィニティブ集計)。前年同期と比べ、件数は18%、金額は42%の大幅減少となった。件数は2013年以来、金額は2012年以来の低水準を記録した。大型案件の落ち込みぶりが目立った。
欧米では3月になって本格的に影響が出始め、4月は壊滅的な状況となった。5月、6月も良くなく、7月から徐々に回復しつつある。感染拡大が先行したアジアは抜け出すのも早く、6月から中国を中心に戻ってきている。
M&A市場はスローダウンしたものの、世界的に資本市場自体は極めて活況だった。新型コロナの影響に対処する手元資金を確保するため、社債発行や増資に一斉に走った。概ね、5月中に資金の確保にめどがついた。

-日本企業では8月に、大型M&Aの発表がありました。
大型案件に限れば、現状は買い手側が様子見となっている。こうした中、いち早く動きを見せたのがセブン&アイ・ホールディングス。米コンビニ大手スピードウェイを約2兆2000億円で買収することになった。反対に、大衆薬事業を米ブラックストーンに約2400億円で売却するのは武田薬品工業。ブラックストーンは当社の親会社でもあるが、日本でもこの種のPE(プライベートエクイティ・ファンド)が根付き始めている。今後、ノンコア事業をスピンオフする際、PEファンドに売却するケースが増える可能性がある。

コロナ後を見据えた事業再構築、秋以降が本番
-2020年後半、注目すべき点は。
世界中の企業では目下、コロナ後を見据えたビジネスの再構築に向けて、様々な選択肢が検討されている状況にある。事業の選択と集中のため、売却を進める企業がある一方で、逆に積極的に買収するケースも出てこよう。秋以降が本番だと思う。

新型コロナでは多くの企業がサプライチェーン(供給網)の分断という事態に直面した。単に調達先を変更するのではなく、事業ポートフォリオ自体を再編したり、自分たちの拠点を見直したり、いろいろなことが起きるだろう。新型コロナの影響とは別に、クロスボーダー(国際間)の大型案件をめぐっては各国当局による審査の長期化、規制強化など保護主義的な傾向が見られ、注視したい。

-ロンドン証券取引所グループ(LSEG)によるリフィニティブ買収(2019年8月発表)は年内にも手続きが完了する見通しですが、経営統合に期待することは。
両者は極めて高い補完関係にある。世界をリードする金融のデータ・分析ビジネス、資本市場を支える重要な機能、広範なポストトレーディングサービスなどが組み合わさることで、あらゆる地域でこれまでにない、より良いサービスが提供できるようになればと思う。

◎富田 秀夫(とみた・ひでお)さん
1982年慶応義塾大学法学部卒。株式会社共同通信社、IQファイナンシャル・システムズなどを経て、2012年トムソン・ロイター・ジャパン(現リフィニティブ・ジャパン)社長に。東京都出身。