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2021年2月8日

新発債の透明化に向け新ルール、需給悪化局面で真価問われる主幹事

Japan Financial Service Agency

リフィニティブ・ジャパン株式会社 

ディールウォッチ編集部 債券チームリーダー

片山直幸

新発の一般債市場で、主幹事が個別の投資家名や購入金額などの情報を発行体に報告する新たな自主ルールが今年1月からスタートしました。起債運営や販売状況などの透明化の向上が目的です。ルール違反となれば「罰則」が科せられ、「募残」は通常、主幹事の「自己ポジション(ブック)」の勘定に入ります。問題は需給悪化局面になった時で、自己ブックが必要ない精緻なプライシングができるか否か、主幹事の真価が問われます。

今回のルールは日本証券業協会が2020年11月に制定しました。主幹事方式に基づく引き受け方法で、引受会社が一定の引受額を抱えて債券を販売する「リテンション方式」では、投資家の名前や購入金額などを発行体に報告する「トランスペアレンシー方式」と呼ばれる手法の導入が義務づけられました。

新たな規則が導入された背景には、これまで投資家の需要とはかけ離れた水準で条件決定するなど起債プロセスの不透明さがあります。投資家の注文が存在しないにもかかわらず需要があるかのように報告する虚偽行為、具体的には「募残」や発行体に本当の内容を報告せず一部の投資家に価格を値引いて販売する「レス販」が横行していました。

海外市場には「ポット方式」と呼ばれる透明性の高い仕組みが一般的に採用されています。国内市場は不透明な起債運営により海外市場との隔たりは大きく、メディアからの批判も高まっていました。こうした状態を監督官庁の金融庁も問題視していたこともあり、証券業界は長年、抱えていたテーマにメスを入れざるを得なくなりました。

ルールを遵守できるか否かの実効性は「罰則」が大きなよりどころになっています。例えばA証券の販売状況について、B証券が虚偽報告の疑いを持った場合、B証券がA証券のコンプライアンス(法令遵守)担当部門に調査を依頼します。証券会社は社内規定で検査しなければならず、仮に違反となれば内部管理体制不備となります。

募残が発生するのは価格水準が妥当でないためで、需給悪化局面において、主幹事や発行体が投資家目線に合った水準にまでスプレッドをワイド化させることができるかがポイントになります。

投資家からは一気に「ポット方式」にした方がすっきりするとの声も聞かれます。しかし、日本の投資家は地方勢が多く、ポット方式を採用すると、起債運営が機能しなくなる恐れがあります。市場の透明化は前進こそすれ構造的な問題を抱えており、急激な変革に踏み切れないのが実情です。

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