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2022年11月23日

ウェルスマネジメントのデジタル化は正しい選択か?

〜個人投資家への調査結果が導く、ポストコロナのアドバイザリーの最適解〜

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リフィニティブ編集チーム

コロナ禍をきっかけに、金融業界でもテレワークの推進やクラウドサービスの活用が強く後押しされるようになりました。また、デジタル上にセキュアな環境を作りやすくなったため、これまで対面で行っていたアドバイザリー業務等を Web 上で行うことも珍しくなくなっています。

では、実際のところ、そのようなウェルスマネジメントのデジタル化を個人投資家は望ましいことだと感じているのでしょうか? 本稿では、その答えのカギを得るべく行われた調査*をもとに、個人投資家の考え方を紐解いていきます。

I. デジタル化はウェルスマネージャーにとっても必須

ウェルスマネージャーは商品やサービスをパーソナライズすることで顧客の信頼を勝ち取り、顧客のリスク許容度や理想の退職年齢だけでなく、選好するコミュニケーション方法、投資に関する価値観や信念、運用成績の評価のために顧客の好むデータを把握することに尽力してきました。

しかし、コロナ禍によって、対面のような密なコミュニケーションの取り方にも変化の必要性が高まっています。たとえば、WEBミーティングやチャットでのやりとりなどに対応することは必須だと言えます。

一方で、「既存の顧客、特にベテランの投資家らはそれほどデジタル化を希望していないのではないか?」と考える向きもあるでしょう。

これについて、2021 年 10 月と 11 月に Coalition Greenwich 社が、世界の個人投資家1,526人を対象に「投資家と金融機関との現在の関係、金融テクノロジーの利用状況と期待事項、オルタナティブ資産に対する認識、および投資家が投資体験をどのようにパーソナライズしてほしいと考えているかについて理解を深めること」 を目的に、実施したアンケート調査の結果(英語:Getting personal: How wealth firms can attract and retain the modern investor)によると、次のことが分かりました。
 

ウェルスマネジメントのデジタル化は正しい選択か?


個人投資家がアドバイザーを選ぶ際に考慮することとして、「手数料/コスト (59%)」を筆頭に、「市況にかかわらず持続的なリターンを上げられるかどうか (49%)」や「高いリターンを上げられるかどうか (49%)」といった普遍的な事柄や、「幅広いファイナンシャル・プラニング・サービス (35%)」のような業界のプロフェッショナルとしての能力のほか、「デジタル能力 (26%)」も挙げられています。

特に、ミレニアル世代 (35%) と 35〜54 歳以下 (34%) の投資家は、ウェルスマネジメントを依頼する相手を選ぶ際に、デジタル能力を重視する傾向があると分かりました。
 

ウェルスマネジメントのデジタル化は正しい選択か?


また、個人投資家にとって、ウェルスアドバイザーに「オンラインでアドバイザーと投資/データを確認する (27%)」ことを求めたり、「安全が確保された双方向のチャット機能 (21%)」での対応を求めたりもしていることも明らかになりました。

なお、上表では上位 5 つの結果を示しましたが、年代別でいくつかの差異が見られます。詳細は、レポート「顧客体験をパーソナライズする: 現代の投資家を引き寄せ、つなぎとめる方法」にまとめていますので、ぜひ、資料をダウンロードして詳細をご高覧ください。
 

II. テクノロジーがウェルスアドバイザーの重要性に与える影響は?

では、個人投資家はウェルスアドバイザーがテクノロジーによってどう変わると見ているのでしょうか? 「今後 2〜3年で、テクノロジーはファイナンシャル・アドバイザーの重要性にどのような影響をもたらすでしょうか?」との質問を行ったところ、以下のような結果が得られました。
 

ウェルスマネジメントのデジタル化は正しい選択か?


上図の通り、「アドバイザーの重要性は低くなる (27%)」との意見より、「影響はない (33%)」や「アドバイザーの重要性は高まる (31%)」と見通す傾向があり、ウェルスアドバイザーが今後も求められていることが想像できます。

特に、ミレニアル世代の半数近く (47%)  が、今後テクノロジーによって「アドバイザーの重要性が高まる」と回答しており、「低くなる」と回答した3分の1  (33%) を上回っていることも分かっています。これは、重要なシグナルだと言えます。

なお、ここでは単純集計の結果を示しましたが、年代別や地域別ではいくつかの差異が見られます。詳細は、レポート「顧客体験をパーソナライズする: 現代の投資家を引き寄せ、つなぎとめる方法」にまとめていますので、ぜひ、資料をダウンロードして詳細をご高覧ください。

本調査結果の中で、米国の富裕層投資家の「テクノロジーは、アドバイザーに代わって顧客の感情面のニーズを理解することはできない」とのコメントは、ウェルスアドバイザーの本質的な価値を言い表していると感じます。

ウェルスアドバイザーが向き合っているのは、「●●を嗜好する傾向が強く、●●ほどの年収がある属性に存在する人物」ではなく、あくまでひとりの個人です。そのため、当然ながらその個人と向き合い、満足度を上げるようサポートをするべきです。

また、人は急に変化するものではなく、今回の調査対象となった投資家の多くはいまだに、電話 (57%)、対面のミーティング (49%) 、電子メール (48%) など、従来の方法でアドバイザーとやり取りすることを希望していることも分かっています。

このようなことから、ウェルスアドバイザーは「デジタル化ありき」で変化するのではなく、顧客一人ひとりにとっての心地よく最適な体験とはどのようなもので、それを叶えるためにどうデジタルを活用すればいいのか? という発想をベースに、デジタル化の道筋を描いていくことが重要だと考えられます。

そして、それが実践できたなら、自身が提供するサービスの差別化や新たな顧客に明確に成果をアピールできる機会の創出にも繋がることでしょう。

では、顧客の意向を踏まえ、どのように顧客体験を考えていけばいいのか? ぜひ、調査データをもとにしたレポート「顧客体験をパーソナライズする: 現代の投資家を引き寄せ、つなぎとめる方法」にて詳しい内容をご高覧ください。
 

【調査概要】
*調査名   : Coalition Greenwich 社「個人投資家の意向調査」
調査期間: 2021年10月〜11月
調査対象: 世界の個人投資家1,526人
上記内訳:
    居住地 北米(23%)、中南米(13%)、欧州(30%)、日本を含むアジア(33%)
    年齢 35 歳未満(15%)、35〜54 歳(39%)、55 歳超(56%)
    投資カテゴリー 富裕層(29%)、マス富裕層(71%)
    投資判断の方法 オンライン証券利用方(35%)、アドバイザーとオンライン証券のハイブリッド型(44%)、アドバイザー主導型(21%)

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