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2021年6月29日
LIBOR からの移行: 課題、最新動向、ソリューション
本稿は、2021年5月28日投稿された英文ブログの翻訳です。

Head of LIBOR Transition, B&I
Jacob Rank-Broadley
新しいリフィニティブのウェビナーでは、複数の専門家をパネリストとして招いて、差し迫った LIBOR からの移行に関連する多くの課題を分析し、最新の動向を紹介するとともに、市場参加者が利用できるベストプラクティスのソリューションについて議論します。
2021 年 3 月 5 日、英国金融行為監督機構 (FCA) は米ドル LIBOR について、2021 年 12 月 31 日以降は 1 週間物と 2 か月物を恒久的に停止し、残る米ドル LIBOR のテナーついても 2023 年 6 月 30 日以降直ちに公表を停止、もしくは指標性を喪失すると発表しました。
LIBOR は、後継となるリスク・フリー・レート (RFR) に置き換えることが必要となります。リフィニティブをはじめとするベンチマーク・アドミニストレーターが開発するこれらのターム物金利の RFR ベンチマークには一定の需要があります。
データに基づくインサイトをメールで配信する「Refinitiv Perspectives」(英語) をぜひご購読ください。LIBOR からの移行は、金融市場の参加者が長年にわたり直面してきた課題の中で、間違いなく最も困難なものの一つでしょう。
LIBOR は長い歴史を持ち、金融システムに広く普及しています。そのため、契約上の価格設定や契約の変更通知、レガシー契約のエクスポージャーの最小化、潜在的なリスクの管理など、差し迫った RFR への移行は市場参加者にとって非常に多くの課題を生み出しています。LIBOR への移行のスケジュールは?
2021 年 3 月 5 日、英国金融行為監督機構 (FCA) は米ドル LIBOR について、2021 年 12 月 31 日以降は 1 週間物と 2 か月物を恒久的に停止し、残る米ドル LIBOR のテナーについても 2023 年 6 月 30 日以降直ちに公表を停止、もしくは指標性を喪失すると発表しました。
最も広く利用されているテナーは 2023 年まで有効なので市場には一定の余裕がありますが、監督指針では、2021 年末以降は新たな米ドル LIBORを参照する契約を締結しないことが求められているため、企業は取り組みを緩めてはならず、移行計画を押し進めるべきであるという点でパネリストの意見は一致しました。
パネリストの主なメッセージの一つは、現在は急速な変化の時を迎えつつあるということです。2021 年 12 月の重要な期限までわずか数か月を残すのみとなり、企業は移行を乗り切るため、最新動向やベストプラクティスのアプローチを常に把握しておかなければなりません。
リフィニティブによる LIBOR 後継ソリューションおよびサービスの詳細
リスク・フリー・レート
新たな RFR はいくつかの点で LIBOR レートと異なっています。後継レートとなる RFR は翌日物金利に基づくバックワード・ルッキングな指標ですが、一方 、LIBOR には最も長いもので 1 年物の 6 つのフォワード・ルッキングなテナー (および一つのオーバーナイト金利) があります。
さらに、RFR はリスク・フリーまたはほぼリスク・フリーの取引指標であるのに対し、LIBOR は一般的な参加行の信用リスクを織り込んで、パネル銀行が提供した金利に基づいているか、あるいは部分的に実取引に基づいています。
RFR の例としては、米ドル建てのデリバティブやローンの価格設定に使用される米国の担保付翌日物調達金利 (SOFR) や、英ポンド市場における無担保取引向けの翌日物金利である英国のポンド翌日物平均金利 (SONIA) などが挙げられます。
キャッシュ市場におけるレガシー契約の課題
パネル・ディスカッションでは、既存の過去の取引におけるレガシー契約の課題がこれまで見過ごされていることに焦点が当てられました。
LIBOR は 1980 年代半ばに正式に設定され、30 年以上にわたり金利市場を支配してきました。そのため、米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円、人民元建ての多くの金利商品が LIBOR を使用しているとみられます。
米代替参照金利委員会 (ARRC。米ドル LIBOR からより堅牢なリファレンス・レートへの移行を確実に成功させるため、米連邦準備制度理事会とニューヨーク連銀が招集したプライベート市場参加者のグループ) の最近の推定によれば、米ドル LIBOR を参照するレガシー契約のエクスポージャーは 220 兆米ドル付近に上る可能性があります。
これらの金融商品の多くは、デリバティブに関係しているか、あるいは 2023 年 6 月までに満期を迎えますが、市場には米ドル LIBOR を参照するキャッシュ商品 (例: ローン、債券、証券) の米ドル・エクスポージャーが依然として約 5 兆米ドル残存している可能性があり、大きな懸念となっています。
重要な問題の一つは、過去の LIBOR 契約には、米ドル LIBOR の恒久的な停止に対応し得る適切なフォールバック条項が存在しない恐れがあることです。最近署名されたニューヨーク州法の新たな LIBOR 関連法令は、過去の LIBOR フォールバック条項による経済的な悪影響を軽減するものです。
契約にフォールバックが存在しない場合、またはフォールバックが LIBOR に基づいている場合、同法ではあらゆる既存の条項を取り消し、ARRC が推奨するフォールバック条項に置き換えます。
推奨するとして ARRC が公表しているフォールバック条項では、当該条項を有する契約が、レガシー契約の移行時点で、担保付翌日物調達金利 (SOFR) に固定スプレッド調整を加算したレートへフォールバックすることを定めています。この金利は、それぞれの市場における差異 (消費者向けと法人向けなど) を考慮したものでなければなりません。
現場の課題
ウェビナーの視聴者に対するオンライン・アンケートでは、LIBOR から後継レートとなる RFR への移行において直面している主な課題を選択する質問が出されました。その結果は、約半数 (48.4%) はターム物金利の利用可能性について負担があると回答、また多くの回答者 (29%) は手続きとシステムの更新が主な課題であると回答しました。
パネル・ディスカッションでは、ターム物金利を利用できないと多数の回答者が挙げた理由について議論が行われ、一部の市場でターム物金利が必要とされる理由が明らかとなりました。
関係する主な問題は二つです。
第一に、多くのシステムとプロセスはターム構造を有するベンチマークを必要としているということです。単純な話ですが、これに基づいて市場は発展してきましたし、慣習として受け入れられてきたのです。ターム構造から離れるには多くのシステムの改修を必要とするため、時間とコスト面の影響が生じる可能性があります。
第二に、より説得力があると思われる根拠として、例えば貿易金融などにおける一部の商品は、突き詰めればターム構造の概念なしには機能しないという事実があります。
またパネリストは、仮にターム物金利が利用できるのであれば、使い慣れた LIBOR ベンチマークにより近いので、企業は歓迎するだろうと結論付けました。
LIBOR 移行を乗り切るための具体的な支援
リフィニティブは、企業の後継金利への移行を支援するために、ベンチマーク、データ、ツール、分析、サポートから成る包括的なソリューションを開発しています。
リフィニティブのターム物 SONIA (英) (フォワード・ルッキングな英ポンドのリスク・フリー・レート) や米ドル IBOR Cash Fallbacks などの新たなベンチマークを導入します。また、LIBOR 移行に伴うあらゆる変化を考慮した分析のアップグレードや新たな市場データの導入を行います。
リフィニティブは Eikon の専用アプリを開発しました。IBOR Transition アプリでは、ユーザーが金利ベンチマークのグローバルな変更に関する最新情報を把握することができます。更新は定期的に行われ、RFR、改革後の IBOR ベンチマーク、既存の金利、ブローカーの RFR デリバティブ・コンテンツ、取引所の RFR デリバティブ・コンテンツなどのさまざまな金利のニュースと値を提供します。
LIBOR 移行の期限が近づく中、信頼性の高いこうしたデータと革新的なツールは、効率を最大限に高め、日常業務の混乱を最小限に抑えるための貴重な手助けとなるはずです。
関連レポート
LIBOR 移行と IBOR 改革への取り組み

本レポートは、LIBOR などの銀行間取引金利 (IBOR) に関する問題点や課題を理解するための指針を示すものです。さまざまな課題やリスク、代替データやリファレンス・レートの構築について目を向けさせ、LIBOR の公表停止が予定されている 2021 年末を見据え、移行準備に着手するためのものです。
注)本稿は、2021年5月28日投稿された英文ブログの翻訳です。内容に相違がある場合にはリフィニティブのグローバルサイトに掲載されている原文が優先します。
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