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2022年11月2日

個人投資家がウェルスアドバイザーに求める能力、理想像とは? 

〜調査データから見るポストコロナのウェルスマネジメントのあり方〜

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リフィニティブ編集チーム

この数年、コロナ禍や不安定な国際情勢をきっかけにした予測不可能な金融市場の混乱から資産を守るべく、個人投資家は細心の注意を払ってきました。それと並行し、最先端テクノロジーを用いてマーケットの動向をフォローし、魅力的な新たな投資手段を見極め、グローバルなマクロトレンドの変化を追うことも欠かせないため、個人投資家にとっては、「心休まる日がない」という状態がこの先もしばらく続くと見通されます。

そうした中で、彼らが、「この困難を一緒に乗り越えてくれる頼れる存在」を求めるのは自然な流れだと言えます。当然ながら、長くパートナーとしてサポートしてきたウェルスアドバイザーは、その役割を十分に果たせることでしょう。

しかし、世の中が激変するのに合わせ、個人投資家にとっての「頼りたくなるウェルスアドバイザー像」は、以前と比べて少し変わってきていることが調査*によって明らかになっています。

では、ポストコロナにおいて個人投資家に支持されるウェルスアドバイザーはどのような人物なのか? 本稿では、2021年に行われた調査をもとに、個人投資家のニーズを紐解いていきます

I.  個人投資家のデジタル事情
本稿で取り上げるのは、2021年10月と11月にCoalition Greenwich社が、世界の個人投資家1,526人を対象に「投資家と金融機関との現在の関係、金融テクノロジーの利用状況と期待事項、オルタナティブ資産に対する認識、および投資家が投資体験をどのようにパーソナライズしてほしいと考えているかについて理解を深めること」 を目的に実施したアンケート調査の結果(英語:Getting personal: How wealth firms can attract and retain the modern investor)です。

これによると、今日、個人投資家の46%がモバイル・アプリ経由でいつでも投資口座にアクセスできる環境を整えているとのこと。年代別に見ると、35歳未満では56%、35歳〜54歳でも51%がモバイル・アプリを活用していることが分かりました。

個人投資家がウェルスアドバイザーに求める能力、理想像とは?

金融とデジタル・テクノロジーが切っても切り離せない関係になって以来、個人投資家は最もデジタルとの親和性が高いグループのひとつになっていると考えられます。そうした人たちが、先々の予測が難しい時代に、金融市場の動向を常に把握し、自分の資産がどうなっているかを素早く確認できる情報のチャネルとしてモバイル・アプリを選ぶことは当然のことだと理解できます。

さらに詳しく調査結果を確認すると、72%のミレニアル世代は、「他のどのチャネルよりも頻繁にモバイル・アプリで口座情報にアクセスしており、その21%はデジタルウォッチやその他のデバイスも使用している」とあります。今後、ミレニアル世代に続き、デジタルネイティブであるZ世代が個人投資家になっていくにつれ、この割合はより伸びていくものと想像されます。

II. ITリテラシーの高い個人投資家にとってウェルスアドバイザーは“必要”か? 
上述のように、個人投資家のデジタル化が進んだことによって、能動的に情報が得られる機会などが増えている今、彼らの顧客満足度を高めるため、ウェルスアドバイザーには変化が求められています。

特に、個人投資家がウェルスアドバイザーに身につけてほしい能力として想定しているのは、「市況にかかわらず持続的なリターンを上げられるかどうか(49%)」や「高いリターンを上げられるかどうか(49%)」といった普遍的な期待や、「幅広いファイナンシャル・プラニング・サービス(35%)」のような業界のプロフェッショナルとしての能力のほか、「デジタル能力(26%)」も挙げられると調査結果から明らかになっています。

個人投資家がウェルスアドバイザーに求める能力、理想像とは?

モバイル・アプリ等でいつでも口座情報を見られるようになった個人投資家にとって、懸念される情報や問題にできるだけ早く次の一手を打ちたいとなった時、最も信頼できる相談相手であるウェルスアドバイザーに連絡すると仮定して、「彼らが自分と同じ程度のデジタル能力を持っているなら、コミュニケーションコストが下がる(話が早くすむ)はず」と考えるのは妥当なことだと思われます。

では、どの程度の個人投資家が、ウェルスアドバイザーを「最も信頼できる情報源」と見なしているのでしょうか?

調査結果によると、「取引をしている投資アドバイザー/ブローカーの推奨(47%)」は、今や人々の情報ライフラインになっている「ソーシャルメディア(16%)」や「YouTube(15%)」より圧倒的に信頼度が高く、「市場ベンダー(27%)」や「ファンダメンタルズ分析(22%)」よりも重要とされていることが分かりました。

個人投資家がウェルスアドバイザーに求める能力、理想像とは?

上述の点は、ウェルスアドバイザーにとって強い自信になり得ます。

ただし、ミレニアル世代にだけ目を向けると、ソーシャルメディアを非常に信頼できる投資助言のソースのひとつと考えていると回答した割合が35%であったことも分かっています。

では、「ミレニアル世代にとって最も信頼できる情報源」はどのようなものが挙げられているのか? 詳しくはぜひレポート「顧客体験をパーソナライズする: 現代の投資家を引き寄せ、つなぎとめる方法」でご確認ください。

III. 個人投資家が真に求めるのは、ITリテラシーだけではない 
では、個人投資家はウェルスアドバイザーにどの程度のデジタル能力を求めているのか、あるいは、ソーシャルメディアを完全に使いこなせるようになってほしいと感じているのでしょうか?

この点については明確で、個人投資家のウェルスアドバイザーに対する本質的な期待は、あくまでウェルスマネジメントのプロフェッショナルであることです。実際に、「パーソナライズされた投資サービスや商品により多くの費用を支払ってもいい(40%)」と考えていることも分かっています。

IV. 個人投資家の満足度向上に資するウェルスアドバイザー像とは? 
ここまでの流れで、個人投資家は一般的な情報ではなく、「自分に合った、必要な情報」を求めており、その結果として能動的にモバイル・アプリを活用するなどデジタル化を受けており、その姿勢をウェルスアドバイザーにも期待していることが調査レポートから読み取れます。

一方、個人的あるいは自動的にウェルスマネジメントができるデジタルツールも普及し始めており、「自分に最適な運用、必要な情報」を集めやすくはなっています。しかしながら、レポートによると、人間のアドバイザーは“必要ない”と思っているわけではないことも分かりました。

ただ、さまざまな情報ツールによって、従来ウェルスマネージャーのみが得ていた情報も個人投資家が取得できるようになったことから、ある種の情報の非対称性が埋まってきています。そのため、ウェルスアドバイザー達は個人投資家のさらに上を行くための各種努力が必要なことは間違いなさそうです。

そうなると、自分のキャパシティ以上の情報収集や情報記憶が求められ、ウェルスアドバイザーの業務はより難易度の高いものになっていくとも考えられます。特に、多くの個人投資家を抱えるアドバイザーは、アドバイザリーのクオリティを下げずに関係のある顧客すべてに応対することが一層難しくなっていくと想像できるでしょう。

しかし、ウェルスアドバイザーの一部の業務はテクノロジーでも代替可能になっています。たとえば、個人投資家らに完璧にパーソナライズされた情報が自動的に届くようになったことで、従来であれば見逃していたり、こぼれ落ちたりしていた価値のある情報を提供することが可能となりました。つまり、ウェルスアドバイザーが個人投資家にとって本当に価値ある取り組みに注力することができる状態になりつつある、ということだと言えます。

そう考えると、ウェルスアドバイザー達もデジタル化することは、将来的に自身のマーケットにおける差別化や新たな顧客に明確に成果をアピールできる機会の増加に繋がると考えられそうです。

では、本当にそのような未来にシフトしつつあるのか? ぜひ、調査データをもとにしたレポート「顧客体験をパーソナライズする: 現代の投資家を引き寄せ、つなぎとめる方法」にて詳しい内容をご高覧ください。
 

【調査概要】
*調査名   : Coalition Greenwich社「個人投資家の意向調査」
調査期間: 2021年10月〜11月
調査対象: 世界の個人投資家1,526人
上記内訳:
    居住地 北米(23%)、中南米(13%)、欧州(30%)、日本を含むアジア(33%)
    年齢 35 歳未満(15%)、35〜54 歳(39%)、55 歳超(56%)
    投資カテゴリー 富裕層(29%)、マス富裕層(71%)
    投資判断の方法 オンライン証券利用方(35%)、アドバイザーとオンライン証券のハイブリッド型(44%)、アドバイザー主導型(21%)

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