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2021年7月8日

ESG投資とは?仕組みを5つのポイントでわかりやすく解説

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リフィニティブ編集チーム

ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の要素を考慮して投資対象を選別することを指します。近年、ESG投資は、金融の世界ではもちろん、企業経営や社会生活においても浸透しつつあるキーワードになっています。本ブログでは、その内容や仕組みを分かりやすく5つのポイントで解説します。

目次

I. ESG投資とは?5つのポイントで解説

1. ESG投資とは?
2. ESG投資とは?ESG投資の仕組み、投資手法について
3. ESG投資とは?ESG投資と通常の投資の違いについて
4. ESG投資とは?ESG投資とサステナブル投資の違いについて
5. ESG投資とは?日本と海外の違いにゆいて

II. まとめ

 

I. ESG投資とは?5つのポイントで解説

日本においてESG投資に注目が集まり始めたのは、2014年にGPIFが国連責任投資原則(UNPRI)に署名した頃でしょう。それ以降、機関投資家らが実践し、現在ではその言葉を聞かない日はないほど浸透。すでに実体経済に組み込まれている、との意見もあります。

 

1. ESG投資とは?

企業の売上や成長性など、数値で把握しやすい要素(財務情報)ではない、非財務と呼ばれる分野の要素も加味して投資先を選ぶという点で、ESG投資は従来の投資手法とは大きく異なっています。

このように新しい投資方法が取り入れられた背景にあるのが、機関投資家をはじめとした投資家らの行動規範の大きな変化です。そのきっかけとなった出来事のひとつは、2006年当時、国連事務総長であったコフィー・A・アナン氏が行なった「国連責任投資原則(PRI)」の提言に見ることができます。

提言に際し、アナン氏は、「投資の分析・評価に『持続可能な発展』の観点が積極的に組み込まれない限り、『持続可能な発展』自体が牽引力を得るのは困難であり続ける」と指摘しました。この発言を契機に、投資家らは、自らと企業だけでなく社会全体に対してのコミットメントを強くする必要がある、との考えを形成していった、というわけです。

ただ、これだけが投資家を変えたわけではありません。2006年以前、1990年〜2000年代には、再生可能エネルギーの利用や低炭素社会の実現を目指す機運がすでに高まっており、「サステナブル投資」として、その名の通り環境保全やエコロジーに主眼をおいた持続可能な社会づくりに貢献する企業への投資を積極的に行なう動きが一部では生じていました。

また、1920年代には米国の教会組織が、「教義に反する企業や商品に対する投資を行なわない」という倫理的かつ宗教的な理由で、投資対象をネガティブ・スクリーニングするようになっていました。この「SRI(Social Responsibility Investment:社会的責任投資)」は、ESGの考え方の基礎になっているとも言われています。

こうした背景を知ると、ESG投資が「慈善活動やCSRの延長線上にあるもの」と考えられていたことも納得できます。しかし、現在は、そうした考え方でESG投資を捉えることは誤りだと言わざるをえないでしょう。

世界的にはすでに財務情報だけで企業の価値を判断することが“時代遅れ”になりつつあり、投資先の選別時にその企業のESGに対する取り組みや内容・実績を念頭に置くことが珍しくなくなっています。



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2. ESG投資とは?ESG投資の仕組み、投資手法について

ESG投資の主な投資手法としては、以下が挙げられます。

・ネガティブ・スクリーニング
ダイベストメント(投資から手を引く)の対象をESG基準に基づいて除外するやり方。近年では、気候変動と因果関係が深いとされる石炭や火力発電、健康に害が及ぶ薬品やタバコ、軍需産業がネガティブ・スクリーニングによって投資対象から外される事例が増えています。

・ESGインテグレーション
既存の資産運用プロセスにESG評価を組み入れるやり方。財務情報を中心にした業績予想(成長性の予想)や資産コストを精査する際、補助的な要素としてESG評価を用いることが多いとされています。

・ポジティブ(ベスト・イン・クラス)・スクリーニング
「ESG評価が高い企業は、中長期的に業績も高いだろう」という想定で、ESG評価が高い企業を投資先として選別するやり方。

・サステナビリティ ・テーマ型投資
例えば、再生可能エネルギーや太陽光発電、持続可能な農業といった持続可能性に特化した取り組みを行なう投資先を選別するやり方。

・インパクト・コミュニティ投資
さまざまな社会問題の解決や環境保全・改善など、社会全体の持続可能性を阻害する問題に向き合う取り組みを推進している企業に投資する手法のこと。社会的に好影響(インパクト)を与えることを投資の目標にすることが多いといわれます。

・企業エンゲージメント
ESG方針に沿って企業と対話し、ESG項目の改善を行なうよう促す。議決権行使のほか、ESG項目の改善要求や情報の開示を要求するなど、エンゲージメントの内容は幅広いと考えられます。

・国際規範に基づくスクリーニング
「国連グローバル・コンパクトの10原則 」のような国際規範として認められた価値観に則って投資対象をスクリーニングし、選別すること。

(参考:Global Sustainable Investment Review 2018(JSIFによる日本語訳) 、GLOBAL SUSTAINABLE INVESTMENT REVIEW2018 、『ESG投資の研究(加藤康之編著)』、『ESG投資とパフォーマンス(湯山智教編著)』) 
 

超巨額の資産を長期間にわたって市場全体で運用し続ける機関投資家らは、ESG投資の仕組みによって、市場に参加する企業らの持続可能性を高めることで、より永続的にリターンを得られる環境を整えようとしている、と言えます。

また、そのようにしてESGを推進することで持続可能な社会づくりを金融の立場から支えようと取り組む機関投資家のことを、PRIでは「ユニバーサル・オーナー」と呼んでいます。

このユニバーサル・オーナーやそこから委託を受けた運用会社がいずれかの投資手法を採用する際に欠かせないのが、企業がどのような考えや具体的なアクションでESGに取り組んでいるかを把握するための情報です。

近年は、アニュアルレポート(年次報告書)や統合報告書、CSRレポートという形で発表され、内容としては、事業全体が抱えるESGに関連するリスクと中長期的にどのようにその課題に取り組み、どう達成度合いを評価するのか、といったことが記されています。

ただ、経済産業省 産業技術環境局 環境経済室が2019年に実施・発表した「ESG投資に関する運用機関向けアンケート調査」によると、「アンケートに回答があった運用機関(48社/運用総額約3,988兆円)のうち、95 %以上がESG情報を投資判断やエンゲージメントに活用している」ものの、「運用機関の85.4%は、『企業のESG情報の開示が不十分』であり、ESG評価の障害になっている」との認識を示しているとのことです。

 

3.  ESG投資とは?ESG投資と通常の投資の違いについて

ESG投資と従来の投資との一番の違いは、投資先の選別方法にあります。これまで投資先を選別する際には、企業の財務情報など確立された方法で数値化された情報からその価値を読み取って判断するのが一般的なやり方でした。これに対し、ESG投資の場合は、「1. ESG投資とは?」で示した通り、E・S・Gそれぞれの要素を考慮して選別を行ないます。

その理由を簡単に示すなら、機関投資家や運用会社は、「現段階の売り上げが非常に良い企業だったとしても、ESGのいずれかの要素に関する懸念がある場合、『中長期的に見るとその懸念がリスクとして顕在化し、結果的に企業の収益を下げたり価値を落とすことになるかもしれない』と見通し、投資先として選ぶ可能性を低くしたり、投資額を抑える方が結果的に合理的になる」と考えているというわけです。

 

4. ESG投資とは?ESG投資とサステナブル投資の違いについて

ESG投資とサステナブル投資は、目指す目標が「持続可能な社会の実現である」という点において、ほとんど同義だと考えられます。

あえて違いを挙げるなら、ESG投資がESGの要素のすべてをバランスよく、あるいは、いずれかの要素により重きを置いて考慮して投資先を選別するのに対し、サステナブル投資はよりE(環境)の要素を判断基準にして投資先を選別する傾向がある、と言えるでしょう。

 

5. ESG投資とは?日本と海外の違いについて

ESG投資の日本と海外の違いは、採用している投資手法の違いに見ることができます。

世界のESG投資額の統計を集計している国際団体GSIA(Global Sustainable Investment Alliance)の「2018 Global Sustainable Investment Review」での発表では、欧州は国際規範に基づくスクリーニング(77%)、米国ではサステナビリティ・テーマ型投資(77%)がより多く投資手法として採用されています。それに対し、日本では議決権行使・エンゲージメント(13%)の割合が他に比べてやや高いと記載されています。

このような違いは、ESG投資ないしサステナブル投資の手法が採用された経緯と関係があるのかもしれません。

 

Ⅱ.まとめ

今日、企業にとってESGへの対応は「社会的責任を果たす」ということに限らず、投資判断を左右するという点で経営の重要課題になっています。一方、投資の現場では、フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)を果たす意味でもESG投資の推進は理にかなっていると考えられるようになっています。これらのことから、ESG投資は今後、主流になると言えるでしょう。

Refinitivは、ESGの3つの柱にまたがる10の主要テーマ(排出量、環境製品の革新性、多様性と受容性、人権、株主など)について、企業の相対的なESGパフォーマンス、コミットメント、効果を透過的かつ客観的に算出するように設計されたESGスコアの提供などを通し、持続可能な社会づくりに貢献しようとする企業の成長機会と顧客本位の業務運営を徹底する金融機関を支え、世界の金融コミュニティに貢献してまいります。

 


参考文献
・リフィニティブ:コンプライアンスインサイト2021春号
・リフィニティブ:リッパー・ファンドESGスコア
・国際団体GSIA : 2018 Global Sustainable Investment Review
・経済産業省 産業技術環境局 環境経済室 : ESG投資に関する運用機関向けアンケート調査
・国連GCNJ : 国連グローバル・コンパクトの10原則

免責事項:© Refinitiv 2021
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