1. ホーム
  2. 知りたい投信 なるほどリッパー
  3. 2022年9月20日掲載: 新規設定の投資信託で存在感際立つ「限定追加型投信」

知りたい投信 なるほどリッパー : 2022年9月8日

新規設定の投資信託で存在感際立つ「限定追加型投信」

2022年8月の新規設定の投資信託の中で、多くの資金を集めた「限定追加型投信」について、その特徴などを詳しく解説した。

2022年8月、新規設定の投資信託が募集期間内に集めた金額は、リッパーの推計で 597 億 3,886 万円でした。これは最近の中では比較的大きな規模です。新規設定投信に資金が集まった月は、「限定追加型投信」の募集額が牽引している点が最近の傾向です。

投信には、「追加型」と「単位型」の 2 つがあります。上記の「限定追加型」は「追加型」に分類されるものの、実質的には「単位型」に近いものです。今回は、この「限定追加型」についてご説明しましょう。

I. まずは「追加型」と「単位型」から

まずは基本の「追加型」と「単位型」の違いから見ていきましょう。投信は、運用期間中のいつでも購入できるタイプと、最初の設定時にしか購入できないタイプに分かれます。

いつでも購入できるものは、「追加型投信」です。「オープン投信」ともいいます。投信は、多くの人の資金をひとまとめにして運用しています。投資家の資金を、まとめて1つの大きなお財布に入れるイメージです。そのお財布に、いつでも口が開いていて、新たなお金を入れられます。信託期間は、償還日が設定されていない「無期限」か、10 年またはそれ以上という投信がほとんどです。

なお、投信を最初に設定する時は、約 1ヵ月位の募集期間が設けられます。この期間は投資家からの資金集めの時期。運用をまだ始めていないので、基準価額は変動しません。募集期間内は、いつ申し込んでも発行価格(1 口=1 円など)です。募集期間が終了すると、追加設定期間に入ります。この時から基準価額の変動が始まります。

日本国内で販売されている投信は、圧倒的に追加型です。2022 年 8 月末時点で、国内の投信が 5,907 本あるうち、追加型は 5,812 本。この後説明する単位型は、わずか 95 本です(MMF、MRF 等の日次決算ファンド、不動産投信を除く公募投信)。

追加型に対して、投信の運用開始時にしか購入できない投信を、「単位型投信」といいます。募集期間が終了した後は、新たな資金を入れることはできません。単位型の信託期間は、追加型に比べて短めです。

単位型は、さらに2種類に分けられます。1 つは定期的に同じ内容の投信が設定され、シリーズのようになっている「ユニット型」です。設定した年月が投信の名称の後についており、他の時期の投信と区別できます。もう 1 つは「スポット型」といい、投資環境などから判断して、その時だけ資金を集めてタイミングに合う運用をする、単発で作られるタイプです。

II. 限定追加型とは? ただの追加型と何が違う

本題の「限定型追加型投信」は追加型に属していますが、その名の通り、追加設定ができる期間が限定されています。新規設定の募集期間の後、あらかじめ定められた期間だけ追加募集を行い、その後は、新たな資金での購入ができない投信です。

それは単位型では? と思うかもしれません。一般的な限定追加型は、その投信から出た収益分配金の再投資や、資金移動「スイッチング」に限って購入可能になっています。途中からの購入が一切できない単位型と異なり、限定的に追加購入ができます。大ブームだった時期に設定された毎月分配型投信の中には、限定追加型も多くありました。収益分配金を再投資できるような制度設計だったということでしょう。分配金以外の追加設定ができないので、資金は流出するのみ。現在、それらのほとんどが償還されています。

III. 限定追加型や単位型が購入期間を限定する理由

では、限定追加型投信や単位型投信は、なぜ、募集期間や限定追加期間だけしか購入できないようにするのでしょうか。

運用は、多くの資金を集め、純資産総額が大きい方が安定していると思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。資産総額には、運用の方針に沿った適切な規模があります。投信は、それぞれ「運用の目的」を約款に定めています。良い運用結果を出すためには、新たな資金が入ってきたからといって、やみくもに株式や債券などを買い付けるわけにはいきません。運用の目的に応じて、良質な投資対象を選別し、タイミングを見て購入します。

運用の目的に見合う資産規模を逸脱するほどの資金が投信に入ってくると、運用の効率が悪くなります。その水準を線引きし、過度に資金を集めないようにして投信の品質を保つのです。適切な純資産の規模は、投資対象によってまちまちです。

例えば、世界の株式インデックスに連動する投信なら規模は大きくても耐えられますが、中小型株や新興国などの小さな市場を投資対象にする投信は、小規模が適しています。短期間の債券だけで運用する投信も、規模が小さい方が運用しやすいといえます。また、デリバティブなどを用いる「元本確保型」と呼ばれる投信は、運用の設計上、資金の出入りを極力抑えたいことから、単位型や限定追加型になっていることが多いです。

一方、投資対象が株式の場合、投資家は、割安なタイミングで投信の購入をしたいと考えるのが自然です。基準価額の変動を見ながら、いつでも購入できる追加型の方が適しているといえます。

(グラフ 1 )は、2022 年 8 月末時点で運用中の限定追加型について、リッパーの投資対象分類別に残高を示したものです。やはり限定追加型は債券を投資対象にする投信が多くなっています。

限定追加型投信の多くが債券投信(残高ベース)

過去をさかのぼると、成長株を投資対象にした投信、配当利回りの高い株式が対象の投信、高利回りの低格付け債券を対象にした投信などでも、限定追加型が採用されていました。それらの多くが5年未満で償還を迎えるなど、単位型のスポット型投信に近い特徴となっています。

IV. 限定追加型という特徴を活かして

さて、最近は、この限定追加型が新規設定投信の中で存在感を高めています。冒頭でご紹介したように、8月の新規設定も、限定追加型投信が多くの資金を集めました。2022 年 1 月以降の、月ごとの投信の新規設定状況を(グラフ2)に示しました。募集期間が終了しても一定期間の追加設定をしますので、設定日が属する月の購入分を含みます。

新規設定投信の各設定月における資金純流入額

個々の銘柄を見ると、2つのパターンがありそうです。

1 つは、単位型のユニット型投信のように、同じコンセプトの投信が定期的に設定されているシリーズもの。定期的に販売されているので、1本ごとの残高は目立って大きくはありませんが、シリーズ全体では定番商品です。

もう一方のパターンは、大型のスポット投信です。設定した月は、既存の投信を含めた株式オープン投信純流入額ランキングの上位に並んでいます。3 月、8 月に新規設定された限定追加型投信は、それぞれの月の純流入額が1位でした。6 月の限定追加型は2位となっていました。いずれも債券または転換社債が投資対象。株式投信やバランス投信の人気投信を押しのけての資金流入です。

これらを見てくると、世界的に株式市場への不透明感が高まっているからでしょうか、投信の新規設定に小さな変化を感じます。また、株式投信のように基準価額の変動が大きい投信を使った運用は、「ロングセラーの追加型をタイミングしだいで適宜投資をするか、長期の積立投資」という形で、運用目的によるすみ分けができつつあるようにも感じられました。